ウィスキーをハイボールで

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ぼくはハイボール(ウィスキーのソーダ割り)が好きである。「ウィスキーをソーダで割って飲むのはもったいない」と言う人がいるが、ぼくはそうは思わない。ウィスキーは水で割ってしまうとただ薄くなるだけだが、ソーダで割れば味や香りが開いて、ストレートで飲むのとはまた違う味わいが楽しめる。

お酒は何でもそうだが、ウィスキーも銘柄がいっぱいあり、ハイボールで飲んで美味いものとそうでないものとがある。そこで、いまの日本において「その辺で売っている」と思われる代表的な銘柄を念頭に、ハイボールで飲んで美味い酒・そうでもない酒について思うところをぼくなりに書いてみたい。

長くなるので、目次を作った。興味のあるところからお読みいただきたい。

  1. 「ウィスキーをハイボールで」の検索結果 - Yahoo!検索
  2. ハイボールに合わないウィスキーとは
  3. ハイボールに合うウィスキー バーボン編
  4. ハイボールに合うウィスキー スコッチ編
  5. ハイボールに合うウィスキー その他編
  6. ハイボールに合うウィスキー以外の酒
  7. おまけ1:ウィスキーの買い方
  8. おまけ2:バーでウィスキーを飲む

1.「ウィスキーをハイボールで」の検索結果 - Yahoo!検索

手始めに Yahoo! Japan で「ウィスキーをハイボールで」と入力して検索してみた。上位にヒットするものでまあまあ面白そうなものを以下に引く。

  1. ハイボール飲み比べレポート;酒庫住田屋
  2. ハイボールに合うウイスキー一覧|おすすめおつまみレシピも紹介!-カウモ
  3. ハイボールに合うウイスキーの銘柄と、美味しいハイボールの作り方 - NAVER まとめ
  4. ハイボールにあうウイスキーの銘柄とおつまみ特集!家飲み万歳~!|JOOY [ジョーイ]
  5. 検証ハイボールに合うウイスキー達の戦い!!帯広飲食店情報サイト・トカオビウェーブ!
  6. 【ハイボールに合うウイスキー】大容量ペットボトルという賢い選択
  7. ハイボールに合うウイスキー - お酒 解決済 | 教えて!goo
  8. ハイボールに合うウイスキー、合わないウイスキーってありますか? - Yahoo!知恵袋
  9. ハイボールにすると美味しいウイスキーはどのウイスキーでしょうか? - Yahoo!知恵袋
  10. ハイボールにあうウィスキー : まとめますた

ここに書いてあることはおおむね2つに分かれ、ひとつは「美味いウィスキーで作ったハイボールは美味い」、もうひとつは「割って飲むんだから安いウィスキーで十分」である。

前者は身も蓋もない意見だが、まあ真実である。美味いウィスキーはボトルで買ってもバーで飲んでもそれなりの値段だが、お財布が痛まないならある程度上等な酒を飲むのは人生経験としては悪くない。「遊ばない人間は死に顔が汚い」などと言うが、何かの加減で今日死ぬことになったとき、走馬灯の中で「ああ、あの時飲んだロイヤル・サルートのハイボールは美味かったなあ」などと思い出せたら、死んで天国に行くか地獄に行くかはともかくとして、死に際そのものは安らかに迎えられるかもしれない。

後者は、どうだろうか。冴えないウィスキーがソーダ割りで華やかに変身することはあるような気がぼくはするのだが、この世にはどう飲んでも美味くない安酒というものもある。晩酌に「トリス」や「ブラックニッカ」をソーダで薄く割ったのを飲みながら飯を食うというのは日本ではよくある光景かもしれないけれど、それこそ走馬灯の中で「ああ、安酒ばっかりガブガブ飲むんじゃなくて、たまにはもうちょっとマシな酒を飲んでおけばよかったなあ」などと思うのも哀(かな)しいかもしれない。

では、ロイヤル・サルートとトリスの「中間あたりの妥協線」とは具体的にどのあたりか。これから書くのはそういう話である。

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2.ハイボールに合わないウィスキーとは

「ハイボールに合わない」というか、「そのウィスキーの飲み方としてはハイボールはベストではない」というウィスキーは結構ある。どういうウィスキーか。思いつくまま重複を恐れず列挙すると、こんな感じだろうか。

  1. 味と香りの強いもの
  2. アルコール度数も含め「強さ」あるいは「辛さ」をセールスポイントにしているもの
  3. 味わいが洗練されスムーズ過ぎるもの
  4. シングルモルト
  5. 上等なもの、すなわち値段の高いもの

以下、順番に見る。

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「味と香りの強いもの」は割って飲むと味と香りのバランスが崩れる。特にソーダで割るとストレートや水割りと違う香りが立ってしまい、それがそのウィスキーの元の味わいをそこねることがある。こういうウィスキーはストレートで飲むのが正解で、酒として辛過ぎるのであればロックグラスに小さい氷を入れてステア(マドラーバースプーンでくるくるかき混ぜる)し少しだけ水を加えてさらにステアしマイルドにする。

先に掲げた検索結果の中でひんぱんに挙がっている銘柄でいうと、ジャック・ダニエルラフロイグ、あと個人的にはボウモアもこれに当たる。どれも美味い酒だからどう飲んでも美味いのだろうが、ジャック・ダニエルはともかく(後述)、ボウモアやラフロイグはソーダで割って飲む酒ではない。

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「強さ辛さが売りのもの」にはソーダで割っても味も香りも開かないものがある。ストレートでガンガンあおる用にできていて、チビチビ飲りながら香りを楽しむという酒ではないのだ。代表格はワイルド・ターキーである。バーボンはほかにいくらでもあるので、何もわざわざターキーをソーダで割らなくてもいい。おすすめ銘柄を紹介するうちにバレると思うが、ぼくは甘い酒を飲んでほんわか酔っ払うのが好きなので、正直言ってワイルド・ターキーという酒の良さが分からない。

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「味わいが洗練されスムーズ過ぎるもの」は割ってしまうともの足りない。またスムーズなりに味と香りのバランスが完成されているので、割ってしまうとそのバランスが崩れる。このあたりは「味と香りの強いもの」と同じである。

代表格はメーカーズ・マークブラントンだろう。ちょっと偏見かもしれないが、ぼくは「洗練されたバーボン」というのはどこか矛盾した存在だと思うのだ、「それはバーボンじゃないだろう」と。メーカーズ・マークはともかく、ぼくはブラントンを飲んで正直「がっかり」した。こういう酒を美味いバーボンだといってありがたがる感覚はぼくにはない。

スコッチの場合、ある銘柄を「スムーズ過ぎるのでハイボールに合わない」と思うかどうかはほんとうに人それぞれだ。ぼくはシーバス・リーガルのハイボールというのは微妙だ(ダブルのロックでのんびり飲むのが最適じゃないだろうか)と思うが、ロイヤル・サルートのハイボールというのは、一生に一度くらいは飲んでおいてもいいかもしれないという味である。

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すべての「シングルモルト」がハイボールに合わないわけではない。ぼくはグレンリベットのハイボールが好きで、人生でたぶん2本買って飲んだ。だがそれはグレンリベットが割って飲むのに耐えるほど非常に甘い酒(「ブランデーみたい」と言ったバーテンさんがいた)だったからだと思う。シングルモルトというのはやっぱりテイスティング・グラスに入れて(辛過ぎるならごく小さい氷と水をちょっとだけ入れて)グラスを振ってはひと口含んでなんか知ったかぶりなことを口走ってみる、というペダントというかスノビズムを愉しむものなんじゃないだろうか。シングルモルトを氷の入った10オンスタンブラーに注ぐという時点で何か「終わっている」気がするのはぼくだけだろうか。

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「高いウィスキー」というのはだいたいいま言ったどれかに該当する。アードベッグタリスカーラガヴーリンマッカラングレンモーレンジブッカーズ。どれもぼくにとってはソーダで割るなんて「正気の沙汰ではない」としか思えない酒である。

まあ、酒の飲み方なんて人それぞれなので、グレンモーレンジをソーダで割りたければそうしてもいいのである。ちなみにぼくはタリスカーで「ラスティ・ネイル」を作ってもらうのが好きだった。スコッチにドランブイを混ぜてしまうこのカクテルを飲んで「ウィスキー・ボンボン」と言った人がいた。「なんでそこまで甘くして飲みたいねん?」いいじゃないか、ぼくは食後には甘いカクテルが飲みたいのだ。

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ウィスキーに詳しくない人が見たら「ハイボールに合わないウィスキーがこんなにあるのか!」と思うかもしれない。いやいや、「その辺で売っているウィスキー」だけでも、いま列挙した中に入っていないものはいっぱいある。

というか、いま挙げた酒はどれもウィスキーとしては上等な部類に入るものばかりである。ウィスキーって、こんなに高くなくても十分美味いものがいくらでもあるのだ。

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3.ハイボールに合うウィスキー バーボン編

ハイボールに合うウィスキーとは、さっき掲げた「ハイボールに合わないウィスキー」の条件の逆、つまり

  • 味も香りも辛さも洗練度も値段もほどほどなブレンデッド・ウィスキー

である。「ほどほど」とは「最下位ではない」という意味もあり、冒頭でも言ったとおり世の中にはどう飲んでも美味くない安酒というものがあって、そういうのはソーダで割ってもやっぱり美味くない。だがこの世は「下には下がある」というものでもあるので、何をもって最下位とし何をもって「ほどほど」とするかも人それぞれである。あとは趣味の問題というよりお財布との相談になってくる。

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ではこれから、「味も香りも辛さも洗練度も値段もほどほどなブレンデッド・ウィスキー」を具体的に紹介したい。「ウィスキーといえばスコッチだろう」という意見もあるかもしれないが、なんとなくバーボンから話を始める。

筆頭はジム・ビーム。「ハイボールで飲みやすくて飲み飽きない」バーボンといってこれに勝るものはない。

「以上。」で終わってもいいくらい、ジム・ビームはおすすめである。で、ここからは「あなたはバーボンのハイボールに何を期待しますか?」という話になってくる。バーボンというのはそもそも甘い酒であり、日本人がふだん食べているものとあまり合わない。それはソーダで割っても同じ、というか、多くのバーボンがソーダで割るとむしろ甘さが引き立ち、ケチャップ味の料理でなければチョコレートとしか合わないという味になる。だから、「晩酌にハイボールを」と思う向きは、そもそもバーボンを選ぶべきではない(「夕食はいつもハンバーガーかホットドッグと決めています」というのでなければ)。

ではバーボンのハイボールというのはいつ飲むものなのか。「残業後」である。晩飯を食ってからもまだ働かなければならない憂き目に遭った夜、その残業が終わって「あー終わった!」という解放感を味わいたいとき、行きつけのバーでバーボンのハイボールを一杯注文する、あるいは自宅に持ち帰った仕事を終わらせた23時半、「さあ寝るか」という前に自分でバーボンのハイボールを一杯作って飲む、これはそういう酒である。要は「気分転換」なのだ。理屈抜きの甘味と強烈な香りで頭の中をバーン!と初期化したい、そういう時に飲むのがバーボンのハイボールである。

そうすると、ハイボールに合うバーボンにはそういう頭の中をバーン!と初期化させられるだけのインパクトが必要だということになる。ぼくは最近バーボンをガブガブ飲まないのでジム・ビームで十分バーン!という感覚を味わえるが、ひとによってはジム・ビームではもの足りないと思うかもしれない。

そこで、主な選択肢を2つ紹介する。ひとつはジャック・ダニエル。「ジャック・ダニエルはハイボールに合わへんってさっき言うたやん?」と言われるかもしれないが、「理屈抜きの甘味と強烈な香りで頭の中をバーン!と初期化」といってこの酒よりふさわしい酒を思い描くのも逆に難しい。そもそもテネシー・ウィスキーであってバーボン・ウィスキーではないのだが、味と香りの方向性は基本的にバーボンと同じである。「こまけぇこたぁいいんだよ!」

もうひとつはI.W.ハーパー。ハーパーはソーダで割ると甘みといい香りといいもう「お菓子のような」お行儀のいい味わいになるのだが、お行儀のいい女の子がつまらないかというとそういうものでは決してないように、ハーパーのハイボールというのも実にチャーミングな酒である。いわば「ビッチな」ジャック・ダニエルとどちらが好みか、人によるだろうし同じ人でもその日の気分によるかもしれない。なお、バーボンはハイボールにするとなぜかブクブクに泡が立ってあまり美しくないが、ハーパーは特にブクブクになるような気がする。

チャーミングでアトラクティブなハイボールということで言えば、ジム・ビーム、ジャック・ダニエル、I.W.ハーパーを挙げておけば入門編としては十分だとぼくは思う。バーボン好きはエヴァン・ウィリアムスの名前を挙げることが多いような気がして、ぼくの中では「ハイボールで美味い酒」には入らないが、人気のある酒なのは事実で実際どこのバーにも酒屋にもたいていあるように思う。

最後に触れておくべきはアーリータイムズだろう。ぼくはこの酒は「味と香りが合っていない」と思う。つまり「安酒」なのだと思う。ところが、ソーダで割るとその味と香りの合わない部分がぼくの中ではうまくつながる。つまり、ハイボールで「化ける」酒である。あまりおすすめの選択肢ではないが、比較的どこにでも売っている気がするし、このラフな味と香りは「理屈抜きの甘味と強烈な香りで頭の中をバーン!と初期化する」には十分だ。

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4.ハイボールに合うウィスキー スコッチ編

「気分転換」という言い方をすれば、酒はそもそもどんな酒でも気分転換のために飲むものだと思う。だが、バーボンとスコッチでは気分転換のあり方が少し違うような気がする、特にソーダ割りに関しては。

「味も香りも辛さも洗練度も値段もほどほどなブレンデッド・スコッチ・ウィスキー」というのはスコッチとしてはインパクトが足りないと思う。高価なバーボンが必ずしも美味くないのに比べ、スコッチは高価なら高価なりのインパクトが確実にある。ワインと同じである。そういうスコッチの世界であえて「ほどほど」のものを選ぶということはつまりインパクト自体も「ほどほど」だということである。

そういう「ほどほど」なインパクトの酒をいつ飲むか。ひとつは晩酌である。ビールを飲みながら食事をする習慣のある向きは、自分の好きなスコッチのハイボールで食事することができると思う。もうひとつは昼間、世間の人がコーヒーや紅茶を飲む時間にハイボールを飲むのである。ぼくは白ワインはアリゴテが好きなのだが、いまのぼくの収入ではアリゴテらしいアリゴテは買えない。それで、ネット検索をしていて「午後のテラスでアリゴテをグビグビ」などという記事を見つけるとちょっとイラッとするのだが(缶ビール1箱分の金でも買えへん酒をグビグビ飲めるかあ!)、こういう時にスコッチのハイボールだとアリゴテの半分以下の値段でアリゴテの何倍も飲める。あるいはお花見。「リースリングでお花見」とか楽しそうだとぼくは思うが、これもスコッチのハイボールにした方が同じ値段でいっぱい飲めてずっと安上がりである。

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では具体例。まずカティ・サーク。「ウィスキーです」という以上に何の特徴もない酒だが、いやいや、ハイボールだとなかなか飲み飽きない酒である。日本人がふだん食べているものにも合う、とぼくは思う。

「カティ・サークはあんまりだろう」という向きには、デュワーズ・ホワイトラベル。あるいはフェイマス・グラウス

バーに行って「ラスティ・ネイル」や「ゴッドファーザー」といったウィスキー・ベースのカクテルを注文すると「ウィスキーは何になさいますか」ときかれるので「指定せえへんかったら何を使う?」と逆にきく。それなりの確率で「バランタイン・ファイネストです」と言われるが、「デュワーズ・ホワイトラベルです」か「フェイマス・グラウスです」という答がふつうだろう(ただ前者と後者の比は7:3あるいは8:2くらいで、特に近年圧倒的にデュワーズの人気が高い)。この2つはそういう銘柄、「とりあえずスコッチ・ウィスキーです」という時に出される銘柄である。クセがないということでもあり、間違いのない味だということでもある。

ただ、そこが逆にぼくがカティ・サークをイチオシする理由でもある。「特徴がないんやったらもっと安くてもええんとちゃうん?」特徴のない酒にそれなりの金を払うというのも、なんかシャクな気がするのだ。

バランタイン・ファイネストというのはハイボールに合う酒だろうか?ぼくの中では微妙なのだが(「辛さを楽しむ酒」なんじゃないかと。だから逆に「ゴッドファーザー」なんかにすると刺激的でイイ!のではないかと)、「辛い酒でハイボール、いいじゃないか」という向きには受けるかもしれない。晩酌に向かないということも決してない(その辺が同じ「辛い酒」でもバーボンのワイルド・ターキーなんかと違うところだ)。

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ひと昔前に流行ったスコッチはたいていハイボールとして飲むことができる。ホワイトホースオールドパージョニー・ウォーカー。日本人の口に合うのだろう。価格帯からいえば晩酌向きなのはホワイトホースで(「ジョニ赤」も安いけれどあの味を晩酌向きと思うかどうかは人によるのではないか)、オールドパーはシーバス・リーガルとかと同じ「ちょっと特別な酒」である。休日前の夜にゆっくり飲んだりするのに向いているが、そういう場合、1杯目はハイボール、2杯目はオンザロックという飲み方もできる。特別な酒は特別なグラスがあると楽しい。

量販店に行くと2,000円までのスコッチ・ウィスキーというのはかなり豊富に選択肢がある。バーボンはいろいろあるように見えてそんなに味の違いってないような気がぼくはするが、スコッチは低価格帯でもかなり千差万別な味が楽しめる。順番に買ってはストレート・ロック・ハイボール・水割りなどで試してみられるといい。どうしても口に合わないものはジンジャエールで割ればとりあえず飲める。

個人的なおすすめはグランツである。グランツのハイボールというのはどことなく紅茶をほうふつとさせるところがあり(ジョニー・ウォーカーにもそういうところがある)、カフェインに拒否反応(厳密な表現ではないが「アレルギー」)があって紅茶もコーヒーも飲めないぼくはグランツのハイボールを飲みながらケーキを食べたりする(冒頭の写真。グランツとコージーコーナー「ラムレーズンのミルクレープ」とのツーショット)。くつろぎの午後にほんわか気分転換したい時、グランツのハイボールは華があっていい。ちなみに、グランツのシングルモルトがグレンフィディックなのだが、グレンフィディックというのはグランツとはずいぶん違う酒である。美味いけれど(美味いからこそ)「割って飲むにはもったいないウィスキー」の代表格みたいな酒である。

低価格帯のスコッチといえば、ハイボール向きとは思わないのだが、ぼくは個人的にバット69が好きである。「バーボンで気分転換」という話をしたが、残業後にバーボンではなくスコッチをあおって気分転換したいと思うなら、これをストレートで飲ってみてはどうだろうか。この値段だから「特別な酒」の味はしないが、そこが逆にイイ!という日もある。スルメエイヒレに合う。

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5.ハイボールに合うウィスキー その他編

アイリッシュ・ウィスキー。ぼくが『鷲は舞い降りた』を読んでブッシュミルズばっかり飲んでいた若い頃(「小説を読んでそこに出て来る酒に憧れる」ということ自体若さの証拠だ)、アイルランドには「ミドルトン」と「ブッシュミルズ」の2つの蒸留所しかないと言われていた(今は違うらしい)。ぼくは「ミドルトン」の酒はタラモアデュー、「ブッシュミルズ」の酒は白いラベルのブッシュミルズを飲むが、どちらもストレートで飲むのがベストで(というか「ストレートで飲みやすい酒」で)「ハイボールが美味い」という酒ではない。もちろん、ハイボールで飲めなくはないし、「割って飲むのはもったいない」という酒でもない。

カナディアン・ウィスキー。選択肢はカナディアン・クラブクラウン・ローヤルかのどちらかだろうけれど、後者はともかく前者はウィスキーを飲み慣れると「わざわざ金を出して買う酒かあ?」と思うようになる。ソーダで割るなら、悪いことは言わないから同じ値段のスコッチを買った方がいい。

国産ウィスキー。うーん。

ぼくはニッカの酒を飲まない(オールモルトをひと瓶飲んだはずだがほとんど記憶にない)のでサントリーの話だけすると、「もともと水で割って飲む前提のトリスサントリーホワイトはハイボールにもなるけれど、角瓶は個人的にはストレートの方が好きだなあ」ということだ。こないだ偶然山崎を手に入れてソーダで濃い目に割り、「ああ、やっぱり高い酒はちゃうなあ」と思ったけれど、カナディアン・ウィスキーと同じで「世間には同じ値段でもっと美味いウィスキーがあるよ」と思う。

ぼくにとってサントリー角瓶とは「駅のホームで買って鉄道の車中でラッパ飲みする酒」である。出稼ぎとか出張とか、ひとに小突き回されながら今日はあちら明日はこちらという生活をしていた頃の「旅愁」が角瓶のポケット瓶には詰まっていて、たまに飲むと当時の思い出で胸が苦しくなる。だから、ぼくにとっては美味いとか不味いとかいう酒ではないし、これを毎日飲もうかという気にもならない。

というか、国産の酒がよければ、ウィスキーにこだわらずたとえば黒霧島をソーダで割ってみてはどうだろう?「ハイボール」だから、レモンも梅干も唐辛子(「金魚」という)も入れず、ただソーダで割っただけ。黒霧島が甘い酒だからかもしれないが、それなりに美味いとぼくは思う。

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6.ハイボールに合うウィスキー以外の酒

ジンをトニック・ウォーターで割ると「ジントニック」、ジンジャエールで割ると「ジンバック」、ソーダで割ってレモンかライムを絞ると「ジンリッキー」である。「酒をソフトドリンクで割ったものはみんなハイボールだ」とウィキペディアには書いてあるが、そうなのかね、と思う。

いま「黒霧島をソーダだけで割る」という話をしたが、ぼくは黒霧島だけでなく、ウォッカもソーダだけで割って飲むことがある。ストリチナヤフィンランディア、あるいはズブロッカあたりが美味い。タンカレーアブソルートも悪くはないがスミノフはイマイチである。

主要なハードリカーの中で「何も入れない単純なソーダ割り」で美味いとぼくが思うのは、ウィスキーでなければウォッカである。理由は、先に見た「ハイボールに合う酒・合わない酒」の議論と同じである。ジンとテキーラは香りが強過ぎる。ラムは甘さを味わう酒で、割るとバランスが崩れる(いっそコーラのようにだだ甘い飲料で割ってしまうのがいい)。ブランデーは甘味・香り・強さどれを取っても強烈で、少なくともソーダで割って飲むと台なしになる。ただし開封して飲み切れず年単位でほったらかして「ダメになった」ブランデーが家庭にもバーにも結構あるものなので、そういうのはジンジャエールで割ってさっさと飲んでしまう。カミュだろうがサンヴィヴァンだろうがダメなものはダメである(とあるサイトによれば「ブランデーの賞味期限は開封後6ヶ月」だそうだ。バーでブランデーを注文して「これ枯れてるよね?」と思ったことが何度かあるが、たぶんぼくは正しかったのだ)。

「ウォッカだって強さ・辛さを売りにしてるじゃないか」と思うかもしれない。だがやってみると分かる(かどうかは人による気もする)が、ウォッカをソーダで割ると「味と香りが開く」とぼくは思う。穀物の甘味と香りがほんのり味わえるのだ。「ウォッカって『ほんのり味わう』酒じゃないだろう」と思うかもしれないが、神経の立って眠れない夜にウォッカをソーダで割ってかすかな穀物の香りと甘味をゆっくり味わったりするのも悪くない。厳寒の夜に麦秋の青空を想う。ちょっと詩的だろう。窓の外に雪なんか降っているともっといい。

ジンはジンライムギムレット、テキーラはマルガリータが美味いと思う。ラムは、どうだろう、ぼくはバカルディにせよマイヤーズにせよストレートである。

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7.おまけ1:ウィスキーの買い方

酒を通販で買うと送料分割高になり、値段的には量販店に行って買うのが安い。だが近所に量販店がなければ交通費がかかるし、車がなければ持って帰るのに重い商品でもあり、割高でも通販を利用するメリットはある。

酒の通販といえば、ぼくがよく利用するのは次の3つである。

  1. お酒の通販サイト【なんでも酒やカクヤス】ビール・ワイン・焼酎等を豊富に販売
  2. 【酒 通販】やまや宅配|酒のやまやの通販・ギフトサイト
  3. ビック酒販

このうちウィスキーが買いやすいのは「ビック酒販」だろうか。「やまや」の通販サイトはあまり親切な感じがしないので、お目当ての銘柄がはっきりしているときに参考程度に利用するのがいい。「カクヤス」は「ビック酒販」と「やまや」の間くらいの感じである(「カクヤス」の売りはどちらかというと安さより配送の速さだと思う)。

この記事のリンクはすべて「アマゾン」である。「アマゾン」は「楽天」と違い何を買っても決済窓口が単一だし、会員登録しても訳の分からないメルマガをやたら送りつけてくることもないので、気がつくとありとあらゆるものを「アマゾン」で買うようになる。まさに「エブリシング・バット・ザ・ガール」である。たとえばアンゴスチュラ・ビターズをひと瓶買いたいと思ったら、いちばん手っ取り早いのはやっぱり「アマゾン」である(「カクヤス」「やまや」「ビック酒販」でそれぞれ試してみられたい)。ちなみにアンゴスチュラ・ビターズはジントニックに数滴垂らすと美味いが、実はこれだけをソーダで割ってもなかなかイケる(ぼくはアイスクリームにかけたりもする)。

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8.おまけ2:バーでウィスキーを飲む

ウィスキーをひと瓶買うのではなく1杯だけ味見したいと思ったらショットバーに行くことになるが、近年ショットバーという店は減りつつあるような気がする。間違いのないショットバーはやっぱりホテルのメインバーだが、ウィスキーを味見しに行くだけにしては割高である(そもそも単価が高いし、たいてい10%のサービス料を取られる)。最近は業態的に言うと「カフェ」に当たるような店でウィスキーやカクテルを飲ませるということが流行っている気がして、そういう店を利用する方法もあるが、ちゃんとしたバーテンダーがいなくてアルバイトの女の子がハイボールを作ったりしていて、とりあえず味見するという以上に「ウィスキーを勉強しに行く」には向かない場合も多い。

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ショットバーで酒を飲むというのは「飲食」ではなくてやっぱり「社交」である。だから、ある程度自分のキャラというものを持ちながら、周りの雰囲気にふさわしい言動ができなければならない。「テーブルトーク・ロールプレイングゲームのようなもの」だというちょっとした覚悟が必要なのだが、むかし読んだテーブルトーク・ロールプレイングゲームの入門書に「なりきり過ぎはウザい」と書いてあって、これはバーで酒を飲むときも同じである。バーで酒を飲む際に最低限必要なキャラを考えてみると、

  1. 成人している
  2. 酒が飲める
  3. 金が払える
  4. 目立ちたがらない
  5. 酔っ払わない
  6. 年長者と酔っ払いと喫煙者を嫌わない
  7. 男なら女を口説かない、女なら男に秋波を送らない(必須!他所でやれ)
  8. ひとの話を聞いてそれなりに理解・記憶できる
  9. 自分の話が通じていないと思ったらすぐ口を閉じることができる
  10. ひとにいじられても固まらない
  11. ケンカしない

あたりを「演じる」ことができれば(本当は違ったとしても)バーで追い出されずに酒を飲むことができると思う。そもそも酔っ払いの群れに首を突っ込むわけだから、キャラが薄ければいじられ、キャラが濃過ぎるとケンカになるものだ、ということが分かっていれば、あとはなんとかなると思う。ひとつ言っておくと、終電には必ず乗ること。終電を過ぎてバーに居つくと仕事を終えたコックや板前、キャバ嬢やホステスが店にあふれてきょう一日のストレスをぶちまけ店がカオスになり、シロウトがそれを乗り切るにはよほどのキャラの濃さと懐の深さが必要になる。「人生勉強」にはなるかもしれないけれど、「ウィスキーを勉強する」という次元を完全に逸脱する。

※ぼくの書いていることを読んで「ショットバーってそんなに社交的に『濃い』場所じゃないだろう?」と思う向きもあるかもしれない。これはぼくが関西人で、大阪でショットバーに入り浸った経験があるからだ。よその土地ではこうではないかもしれない。

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ウィスキーを勉強するためにはとにかく「親切なバーテンダーにめぐり会う」ことがすべてである。バーテンダーというのはたいてい技量があればあるほど客に対して礼儀正しく親切なものなのだが、じゃあそういうバーテンダーにどうやったらめぐり会えるかというとこれはもう運である。ひとつだけ言っておくと、ひとは自分と釣り合う人間と出会うようにできているので、礼儀正しく親切なバーテンダーに出会いたかったら自分が礼儀正しく親切な人間になるべきだ。

そういうバーテンダーに出会えたら、できるだけ開店直後の客の少ない時間に行って、ひと晩に飲む量は最大で2杯までにして、ふつうに飲み終わったらすみやかに店を出る。「一軒の店で飲むのは2杯までにし、ハシゴしたければとりあえず次の店まで歩いて自分の酔い加減を確認せよ」という金言をぼくはどこで学んだか忘れたが(村上春樹かな)、一軒で3杯以上飲んではこの金言の真実を思い知る。村上春樹はたしか「ウィスキーは2杯まで、3杯目以降は味なんてしない」とも書いていたはずだが、これも真実である。「ウィスキーを勉強する」ためであればひと晩に飲む量は最大で2杯まで。続きが飲みたければとりあえず家に帰るべきだ。

美学を語っていると思うだろうか。違う。最終的に心配すべきは肝臓でなければ財布の中身である。酒のせいで財布を空にしてはいけない。ぼくが言いたいのはそれだけだ。

バーを出る時のあいさつは、いかに夕方早い時間でも「おやすみなさい」である。「こんばんは」と言って店に入り、「ごちそうさま」と言ってお金を払い、「おやすみなさい」と言って店を出る。これは、そういうものである。

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(2016年07月)

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