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ウィスキーをハイボールで

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ぼくはハイボール(ウィスキーのソーダ割り)が好きである。「ウィスキーをソーダで割って飲むのはもったいない」と言う人がいるが、ぼくはそうは思わない。ウィスキーは水で割ってしまうとただ薄くなるだけだが、ソーダで割れば味や香りが開いて、ストレートで飲むのとはまた違う味わいが楽しめる。

お酒は何でもそうだが、ウィスキーも銘柄がいっぱいあり、ハイボールで飲んで美味いものとそうでないものとがある。そこで、いまの日本において「その辺で売っている」と思われる代表的な銘柄を念頭に、ハイボールで飲んで美味い酒・そうでもない酒について思うところをぼくなりに書いてみたい。

長くなるので、目次を作った。興味のあるところからお読みいただきたい。

  1. 「ウィスキーをハイボールで」の検索結果 - Yahoo!検索
  2. ハイボールに合わないウィスキーとは
  3. ハイボールに合うウィスキー バーボン編
  4. ハイボールに合うウィスキー スコッチ編
  5. ハイボールに合うウィスキー その他編
  6. ハイボールに合うウィスキー以外の酒
  7. おまけ1:ウィスキーの買い方
  8. おまけ2:バーでウィスキーを飲む

1.「ウィスキーをハイボールで」の検索結果 - Yahoo!検索

手始めに Yahoo! Japan で「ウィスキーをハイボールで」と入力して検索してみた。上位にヒットするものでまあまあ面白そうなものを以下に引く。

  1. ハイボール飲み比べレポート;酒庫住田屋
  2. ハイボールに合うウイスキー一覧|おすすめおつまみレシピも紹介!-カウモ
  3. ハイボールに合うウイスキーの銘柄と、美味しいハイボールの作り方 - NAVER まとめ
  4. ハイボールにあうウイスキーの銘柄とおつまみ特集!家飲み万歳~!|JOOY [ジョーイ]
  5. 検証ハイボールに合うウイスキー達の戦い!!帯広飲食店情報サイト・トカオビウェーブ!
  6. 【ハイボールに合うウイスキー】大容量ペットボトルという賢い選択
  7. ハイボールに合うウイスキー - お酒 解決済 | 教えて!goo
  8. ハイボールに合うウイスキー、合わないウイスキーってありますか? - Yahoo!知恵袋
  9. ハイボールにすると美味しいウイスキーはどのウイスキーでしょうか? - Yahoo!知恵袋
  10. ハイボールにあうウィスキー : まとめますた

ここに書いてあることはおおむね2つに分かれ、ひとつは「美味いウィスキーで作ったハイボールは美味い」、もうひとつは「割って飲むんだから安いウィスキーで十分」である。

前者は身も蓋もない意見だが、まあ真実である。美味いウィスキーはボトルで買ってもバーで飲んでもそれなりの値段だが、お財布が痛まないならある程度上等な酒を飲むのは人生経験としては悪くない。「遊ばない人間は死に顔が汚い」などと言うが、何かの加減で今日死ぬことになったとき、走馬灯の中で「ああ、あの時飲んだロイヤル・サルートのハイボールは美味かったなあ」などと思い出せたら、死んで天国に行くか地獄に行くかはともかくとして、死に際そのものは安らかに迎えられるかもしれない。

後者は、どうだろうか。冴えないウィスキーがソーダ割りで華やかに変身することはあるような気がぼくはするのだが、この世にはどう飲んでも美味くない安酒というものもある。晩酌に「トリス」や「ブラックニッカ」をソーダで薄く割ったのを飲みながら飯を食うというのは日本ではよくある光景かもしれないけれど、それこそ走馬灯の中で「ああ、安酒ばっかりガブガブ飲むんじゃなくて、たまにはもうちょっとマシな酒を飲んでおけばよかったなあ」などと思うのも哀(かな)しいかもしれない。

では、ロイヤル・サルートとトリスの「中間あたりの妥協線」とは具体的にどのあたりか。これから書くのはそういう話である。

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2.ハイボールに合わないウィスキーとは

「ハイボールに合わない」というか、「そのウィスキーの飲み方としてはハイボールはベストではない」というウィスキーは結構ある。どういうウィスキーか。思いつくまま重複を恐れず列挙すると、こんな感じだろうか。

  1. 味と香りの強いもの
  2. アルコール度数も含め「強さ」あるいは「辛さ」をセールスポイントにしているもの
  3. 味わいが洗練されスムーズ過ぎるもの
  4. シングルモルト
  5. 上等なもの、すなわち値段の高いもの

以下、順番に見る。

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「味と香りの強いもの」は割って飲むと味と香りのバランスが崩れる。特にソーダで割るとストレートや水割りと違う香りが立ってしまい、それがそのウィスキーの元の味わいをそこねることがある。こういうウィスキーはストレートで飲むのが正解で、酒として辛過ぎるのであればロックグラスに小さい氷を入れてステア(マドラーバースプーンでくるくるかき混ぜる)し少しだけ水を加えてさらにステアしマイルドにする。

先に掲げた検索結果の中でひんぱんに挙がっている銘柄でいうと、ジャック・ダニエルラフロイグ、あと個人的にはボウモアもこれに当たる。どれも美味い酒だからどう飲んでも美味いのだろうが、ジャック・ダニエルはともかく(後述)、ボウモアやラフロイグはソーダで割って飲む酒ではない。

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「強さ辛さが売りのもの」にはソーダで割っても味も香りも開かないものがある。ストレートでガンガンあおる用にできていて、チビチビ飲りながら香りを楽しむという酒ではないのだ。代表格はワイルド・ターキーである。バーボンはほかにいくらでもあるので、何もわざわざターキーをソーダで割らなくてもいい。おすすめ銘柄を紹介するうちにバレると思うが、ぼくは甘い酒を飲んでほんわか酔っ払うのが好きなので、正直言ってワイルド・ターキーという酒の良さが分からない。

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「味わいが洗練されスムーズ過ぎるもの」は割ってしまうともの足りない。またスムーズなりに味と香りのバランスが完成されているので、割ってしまうとそのバランスが崩れる。このあたりは「味と香りの強いもの」と同じである。

代表格はメーカーズ・マークブラントンだろう。ちょっと偏見かもしれないが、ぼくは「洗練されたバーボン」というのはどこか矛盾した存在だと思うのだ、「それはバーボンじゃないだろう」と。メーカーズ・マークはともかく、ぼくはブラントンを飲んで正直「がっかり」した。こういう酒を美味いバーボンだといってありがたがる感覚はぼくにはない。

スコッチの場合、ある銘柄を「スムーズ過ぎるのでハイボールに合わない」と思うかどうかはほんとうに人それぞれだ。ぼくはシーバス・リーガルのハイボールというのは微妙だ(ダブルのロックでのんびり飲むのが最適じゃないだろうか)と思うが、ロイヤル・サルートのハイボールというのは、一生に一度くらいは飲んでおいてもいいかもしれないという味である。

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すべての「シングルモルト」がハイボールに合わないわけではない。ぼくはグレンリベットのハイボールが好きで、人生でたぶん2本買って飲んだ。だがそれはグレンリベットが割って飲むのに耐えるほど非常に甘い酒(「ブランデーみたい」と言ったバーテンさんがいた)だったからだと思う。シングルモルトというのはやっぱりテイスティング・グラスに入れて(辛過ぎるならごく小さい氷と水をちょっとだけ入れて)グラスを振ってはひと口含んでなんか知ったかぶりなことを口走ってみる、というペダントというかスノビズムを愉しむものなんじゃないだろうか。シングルモルトを氷の入った10オンスタンブラーに注ぐという時点で何か「終わっている」気がするのはぼくだけだろうか。

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「高いウィスキー」というのはだいたいいま言ったどれかに該当する。アードベッグタリスカーラガヴーリンマッカラングレンモーレンジブッカーズ。どれもぼくにとってはソーダで割るなんて「正気の沙汰ではない」としか思えない酒である。

まあ、酒の飲み方なんて人それぞれなので、グレンモーレンジをソーダで割りたければそうしてもいいのである。ちなみにぼくはタリスカーで「ラスティ・ネイル」を作ってもらうのが好きだった。スコッチにドランブイを混ぜてしまうこのカクテルを飲んで「ウィスキー・ボンボン」と言った人がいた。「なんでそこまで甘くして飲みたいねん?」いいじゃないか、ぼくは食後には甘いカクテルが飲みたいのだ。

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ウィスキーに詳しくない人が見たら「ハイボールに合わないウィスキーがこんなにあるのか!」と思うかもしれない。いやいや、「その辺で売っているウィスキー」だけでも、いま列挙した中に入っていないものはいっぱいある。

というか、いま挙げた酒はどれもウィスキーとしては上等な部類に入るものばかりである。ウィスキーって、こんなに高くなくても十分美味いものがいくらでもあるのだ。

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3.ハイボールに合うウィスキー バーボン編

ハイボールに合うウィスキーとは、さっき掲げた「ハイボールに合わないウィスキー」の条件の逆、つまり

  • 味も香りも辛さも洗練度も値段もほどほどなブレンデッド・ウィスキー

である。「ほどほど」とは「最下位ではない」という意味もあり、冒頭でも言ったとおり世の中にはどう飲んでも美味くない安酒というものがあって、そういうのはソーダで割ってもやっぱり美味くない。だがこの世は「下には下がある」というものでもあるので、何をもって最下位とし何をもって「ほどほど」とするかも人それぞれである。あとは趣味の問題というよりお財布との相談になってくる。

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ではこれから、「味も香りも辛さも洗練度も値段もほどほどなブレンデッド・ウィスキー」を具体的に紹介したい。「ウィスキーといえばスコッチだろう」という意見もあるかもしれないが、なんとなくバーボンから話を始める。

筆頭はジム・ビーム。「ハイボールで飲みやすくて飲み飽きない」バーボンといってこれに勝るものはない。

「以上。」で終わってもいいくらい、ジム・ビームはおすすめである。で、ここからは「あなたはバーボンのハイボールに何を期待しますか?」という話になってくる。バーボンというのはそもそも甘い酒であり、日本人がふだん食べているものとあまり合わない。それはソーダで割っても同じ、というか、多くのバーボンがソーダで割るとむしろ甘さが引き立ち、ケチャップ味の料理でなければチョコレートとしか合わないという味になる。だから、「晩酌にハイボールを」と思う向きは、そもそもバーボンを選ぶべきではない(「夕食はいつもハンバーガーかホットドッグと決めています」というのでなければ)。

ではバーボンのハイボールというのはいつ飲むものなのか。「残業後」である。晩飯を食ってからもまだ働かなければならない憂き目に遭った夜、その残業が終わって「あー終わった!」という解放感を味わいたいとき、行きつけのバーでバーボンのハイボールを一杯注文する、あるいは自宅に持ち帰った仕事を終わらせた23時半、「さあ寝るか」という前に自分でバーボンのハイボールを一杯作って飲む、これはそういう酒である。要は「気分転換」なのだ。理屈抜きの甘味と強烈な香りで頭の中をバーン!と初期化したい、そういう時に飲むのがバーボンのハイボールである。

そうすると、ハイボールに合うバーボンにはそういう頭の中をバーン!と初期化させられるだけのインパクトが必要だということになる。ぼくは最近バーボンをガブガブ飲まないのでジム・ビームで十分バーン!という感覚を味わえるが、ひとによってはジム・ビームではもの足りないと思うかもしれない。

そこで、主な選択肢を2つ紹介する。ひとつはジャック・ダニエル。「ジャック・ダニエルはハイボールに合わへんってさっき言うたやん?」と言われるかもしれないが、「理屈抜きの甘味と強烈な香りで頭の中をバーン!と初期化」といってこの酒よりふさわしい酒を思い描くのも逆に難しい。そもそもテネシー・ウィスキーであってバーボン・ウィスキーではないのだが、味と香りの方向性は基本的にバーボンと同じである。「こまけぇこたぁいいんだよ!」

もうひとつはI.W.ハーパー。ハーパーはソーダで割ると甘みといい香りといいもう「お菓子のような」お行儀のいい味わいになるのだが、お行儀のいい女の子がつまらないかというとそういうものでは決してないように、ハーパーのハイボールというのも実にチャーミングな酒である。いわば「ビッチな」ジャック・ダニエルとどちらが好みか、人によるだろうし同じ人でもその日の気分によるかもしれない。なお、バーボンはハイボールにするとなぜかブクブクに泡が立ってあまり美しくないが、ハーパーは特にブクブクになるような気がする。

チャーミングでアトラクティブなハイボールということで言えば、ジム・ビーム、ジャック・ダニエル、I.W.ハーパーを挙げておけば入門編としては十分だとぼくは思う。バーボン好きはエヴァン・ウィリアムスの名前を挙げることが多いような気がして、ぼくの中では「ハイボールで美味い酒」には入らないが、人気のある酒なのは事実で実際どこのバーにも酒屋にもたいていあるように思う。

最後に触れておくべきはアーリータイムズだろう。ぼくはこの酒は「味と香りが合っていない」と思う。つまり「安酒」なのだと思う。ところが、ソーダで割るとその味と香りの合わない部分がぼくの中ではうまくつながる。つまり、ハイボールで「化ける」酒である。あまりおすすめの選択肢ではないが、比較的どこにでも売っている気がするし、このラフな味と香りは「理屈抜きの甘味と強烈な香りで頭の中をバーン!と初期化する」には十分だ。

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4.ハイボールに合うウィスキー スコッチ編

「気分転換」という言い方をすれば、酒はそもそもどんな酒でも気分転換のために飲むものだと思う。だが、バーボンとスコッチでは気分転換のあり方が少し違うような気がする、特にソーダ割りに関しては。

「味も香りも辛さも洗練度も値段もほどほどなブレンデッド・スコッチ・ウィスキー」というのはスコッチとしてはインパクトが足りないと思う。高価なバーボンが必ずしも美味くないのに比べ、スコッチは高価なら高価なりのインパクトが確実にある。ワインと同じである。そういうスコッチの世界であえて「ほどほど」のものを選ぶということはつまりインパクト自体も「ほどほど」だということである。

そういう「ほどほど」なインパクトの酒をいつ飲むか。ひとつは晩酌である。ビールを飲みながら食事をする習慣のある向きは、自分の好きなスコッチのハイボールで食事することができると思う。もうひとつは昼間、世間の人がコーヒーや紅茶を飲む時間にハイボールを飲むのである。ぼくは白ワインはアリゴテが好きなのだが、いまのぼくの収入ではアリゴテらしいアリゴテは買えない。それで、ネット検索をしていて「午後のテラスでアリゴテをグビグビ」などという記事を見つけるとちょっとイラッとするのだが(缶ビール1箱分の金でも買えへん酒をグビグビ飲めるかあ!)、こういう時にスコッチのハイボールだとアリゴテの半分以下の値段でアリゴテの何倍も飲める。あるいはお花見。「リースリングでお花見」とか楽しそうだとぼくは思うが、これもスコッチのハイボールにした方が同じ値段でいっぱい飲めてずっと安上がりである。

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では具体例。まずカティ・サーク。「ウィスキーです」という以上に何の特徴もない酒だが、いやいや、ハイボールだとなかなか飲み飽きない酒である。日本人がふだん食べているものにも合う、とぼくは思う。

「カティ・サークはあんまりだろう」という向きには、デュワーズ・ホワイトラベル。あるいはフェイマス・グラウス

バーに行って「ラスティ・ネイル」や「ゴッドファーザー」といったウィスキー・ベースのカクテルを注文すると「ウィスキーは何になさいますか」ときかれるので「指定せえへんかったら何を使う?」と逆にきく。それなりの確率で「バランタイン・ファイネストです」と言われるが、「デュワーズ・ホワイトラベルです」か「フェイマス・グラウスです」という答がふつうだろう(ただ前者と後者の比は7:3あるいは8:2くらいで、特に近年圧倒的にデュワーズの人気が高い)。この2つはそういう銘柄、「とりあえずスコッチ・ウィスキーです」という時に出される銘柄である。クセがないということでもあり、間違いのない味だということでもある。

ただ、そこが逆にぼくがカティ・サークをイチオシする理由でもある。「特徴がないんやったらもっと安くてもええんとちゃうん?」特徴のない酒にそれなりの金を払うというのも、なんかシャクな気がするのだ。

バランタイン・ファイネストというのはハイボールに合う酒だろうか?ぼくの中では微妙なのだが(「辛さを楽しむ酒」なんじゃないかと。だから逆に「ゴッドファーザー」なんかにすると刺激的でイイ!のではないかと)、「辛い酒でハイボール、いいじゃないか」という向きには受けるかもしれない。晩酌に向かないということも決してない(その辺が同じ「辛い酒」でもバーボンのワイルド・ターキーなんかと違うところだ)。

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ひと昔前に流行ったスコッチはたいていハイボールとして飲むことができる。ホワイトホースオールドパージョニー・ウォーカー。日本人の口に合うのだろう。価格帯からいえば晩酌向きなのはホワイトホースで(「ジョニ赤」も安いけれどあの味を晩酌向きと思うかどうかは人によるのではないか)、オールドパーはシーバス・リーガルとかと同じ「ちょっと特別な酒」である。休日前の夜にゆっくり飲んだりするのに向いているが、そういう場合、1杯目はハイボール、2杯目はオンザロックという飲み方もできる。特別な酒は特別なグラスがあると楽しい。

量販店に行くと2,000円までのスコッチ・ウィスキーというのはかなり豊富に選択肢がある。バーボンはいろいろあるように見えてそんなに味の違いってないような気がぼくはするが、スコッチは低価格帯でもかなり千差万別な味が楽しめる。順番に買ってはストレート・ロック・ハイボール・水割りなどで試してみられるといい。どうしても口に合わないものはジンジャエールで割ればとりあえず飲める。

個人的なおすすめはグランツである。グランツのハイボールというのはどことなく紅茶をほうふつとさせるところがあり(ジョニー・ウォーカーにもそういうところがある)、カフェインに拒否反応(厳密な表現ではないが「アレルギー」)があって紅茶もコーヒーも飲めないぼくはグランツのハイボールを飲みながらケーキを食べたりする(冒頭の写真。グランツとコージーコーナー「ラムレーズンのミルクレープ」とのツーショット)。くつろぎの午後にほんわか気分転換したい時、グランツのハイボールは華があっていい。ちなみに、グランツのシングルモルトがグレンフィディックなのだが、グレンフィディックというのはグランツとはずいぶん違う酒である。美味いけれど(美味いからこそ)「割って飲むにはもったいないウィスキー」の代表格みたいな酒である。

低価格帯のスコッチといえば、ハイボール向きとは思わないのだが、ぼくは個人的にバット69が好きである。「バーボンで気分転換」という話をしたが、残業後にバーボンではなくスコッチをあおって気分転換したいと思うなら、これをストレートで飲ってみてはどうだろうか。この値段だから「特別な酒」の味はしないが、そこが逆にイイ!という日もある。スルメエイヒレに合う。

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5.ハイボールに合うウィスキー その他編

アイリッシュ・ウィスキー。ぼくが『鷲は舞い降りた』を読んでブッシュミルズばっかり飲んでいた若い頃(「小説を読んでそこに出て来る酒に憧れる」ということ自体若さの証拠だ)、アイルランドには「ミドルトン」と「ブッシュミルズ」の2つの蒸留所しかないと言われていた(今は違うらしい)。ぼくは「ミドルトン」の酒はタラモアデュー、「ブッシュミルズ」の酒は白いラベルのブッシュミルズを飲むが、どちらもストレートで飲むのがベストで(というか「ストレートで飲みやすい酒」で)「ハイボールが美味い」という酒ではない。もちろん、ハイボールで飲めなくはないし、「割って飲むのはもったいない」という酒でもない。

カナディアン・ウィスキー。選択肢はカナディアン・クラブクラウン・ローヤルかのどちらかだろうけれど、後者はともかく前者はウィスキーを飲み慣れると「わざわざ金を出して買う酒かあ?」と思うようになる。ソーダで割るなら、悪いことは言わないから同じ値段のスコッチを買った方がいい。

国産ウィスキー。うーん。

ぼくはニッカの酒を飲まない(オールモルトをひと瓶飲んだはずだがほとんど記憶にない)のでサントリーの話だけすると、「もともと水で割って飲む前提のトリスサントリーホワイトはハイボールにもなるけれど、角瓶は個人的にはストレートの方が好きだなあ」ということだ。こないだ偶然山崎を手に入れてソーダで濃い目に割り、「ああ、やっぱり高い酒はちゃうなあ」と思ったけれど、カナディアン・ウィスキーと同じで「世間には同じ値段でもっと美味いウィスキーがあるよ」と思う。

ぼくにとってサントリー角瓶とは「駅のホームで買って鉄道の車中でラッパ飲みする酒」である。出稼ぎとか出張とか、ひとに小突き回されながら今日はあちら明日はこちらという生活をしていた頃の「旅愁」が角瓶のポケット瓶には詰まっていて、たまに飲むと当時の思い出で胸が苦しくなる。だから、ぼくにとっては美味いとか不味いとかいう酒ではないし、これを毎日飲もうかという気にもならない。

というか、国産の酒がよければ、ウィスキーにこだわらずたとえば黒霧島をソーダで割ってみてはどうだろう?「ハイボール」だから、レモンも梅干も唐辛子(「金魚」という)も入れず、ただソーダで割っただけ。黒霧島が甘い酒だからかもしれないが、それなりに美味いとぼくは思う。

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6.ハイボールに合うウィスキー以外の酒

ジンをトニック・ウォーターで割ると「ジントニック」、ジンジャエールで割ると「ジンバック」、ソーダで割ってレモンかライムを絞ると「ジンリッキー」である。「酒をソフトドリンクで割ったものはみんなハイボールだ」とウィキペディアには書いてあるが、そうなのかね、と思う。

いま「黒霧島をソーダだけで割る」という話をしたが、ぼくは黒霧島だけでなく、ウォッカもソーダだけで割って飲むことがある。ストリチナヤフィンランディア、あるいはズブロッカあたりが美味い。タンカレーアブソルートも悪くはないがスミノフはイマイチである。

主要なハードリカーの中で「何も入れない単純なソーダ割り」で美味いとぼくが思うのは、ウィスキーでなければウォッカである。理由は、先に見た「ハイボールに合う酒・合わない酒」の議論と同じである。ジンとテキーラは香りが強過ぎる。ラムは甘さを味わう酒で、割るとバランスが崩れる(いっそコーラのようにだだ甘い飲料で割ってしまうのがいい)。ブランデーは甘味・香り・強さどれを取っても強烈で、少なくともソーダで割って飲むと台なしになる。ただし開封して飲み切れず年単位でほったらかして「ダメになった」ブランデーが家庭にもバーにも結構あるものなので、そういうのはジンジャエールで割ってさっさと飲んでしまう。カミュだろうがサンヴィヴァンだろうがダメなものはダメである(とあるサイトによれば「ブランデーの賞味期限は開封後6ヶ月」だそうだ。バーでブランデーを注文して「これ枯れてるよね?」と思ったことが何度かあるが、たぶんぼくは正しかったのだ)。

「ウォッカだって強さ・辛さを売りにしてるじゃないか」と思うかもしれない。だがやってみると分かる(かどうかは人による気もする)が、ウォッカをソーダで割ると「味と香りが開く」とぼくは思う。穀物の甘味と香りがほんのり味わえるのだ。「ウォッカって『ほんのり味わう』酒じゃないだろう」と思うかもしれないが、神経の立って眠れない夜にウォッカをソーダで割ってかすかな穀物の香りと甘味をゆっくり味わったりするのも悪くない。厳寒の夜に麦秋の青空を想う。ちょっと詩的だろう。窓の外に雪なんか降っているともっといい。

ジンはジンライムギムレット、テキーラはマルガリータが美味いと思う。ラムは、どうだろう、ぼくはバカルディにせよマイヤーズにせよストレートである。

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7.おまけ1:ウィスキーの買い方

酒を通販で買うと送料分割高になり、値段的には量販店に行って買うのが安い。だが近所に量販店がなければ交通費がかかるし、車がなければ持って帰るのに重い商品でもあり、割高でも通販を利用するメリットはある。

酒の通販といえば、ぼくがよく利用するのは次の3つである。

  1. お酒の通販サイト【なんでも酒やカクヤス】ビール・ワイン・焼酎等を豊富に販売
  2. 【酒 通販】やまや宅配|酒のやまやの通販・ギフトサイト
  3. ビック酒販

このうちウィスキーが買いやすいのは「ビック酒販」だろうか。「やまや」の通販サイトはあまり親切な感じがしないので、お目当ての銘柄がはっきりしているときに参考程度に利用するのがいい。「カクヤス」は「ビック酒販」と「やまや」の間くらいの感じである(「カクヤス」の売りはどちらかというと安さより配送の速さだと思う)。

この記事のリンクはすべて「アマゾン」である。「アマゾン」は「楽天」と違い何を買っても決済窓口が単一だし、会員登録しても訳の分からないメルマガをやたら送りつけてくることもないので、気がつくとありとあらゆるものを「アマゾン」で買うようになる。まさに「エブリシング・バット・ザ・ガール」である。たとえばアンゴスチュラ・ビターズをひと瓶買いたいと思ったら、いちばん手っ取り早いのはやっぱり「アマゾン」である(「カクヤス」「やまや」「ビック酒販」でそれぞれ試してみられたい)。ちなみにアンゴスチュラ・ビターズはジントニックに数滴垂らすと美味いが、実はこれだけをソーダで割ってもなかなかイケる(ぼくはアイスクリームにかけたりもする)。

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8.おまけ2:バーでウィスキーを飲む

ウィスキーをひと瓶買うのではなく1杯だけ味見したいと思ったらショットバーに行くことになるが、近年ショットバーという店は減りつつあるような気がする。間違いのないショットバーはやっぱりホテルのメインバーだが、ウィスキーを味見しに行くだけにしては割高である(そもそも単価が高いし、たいてい10%のサービス料を取られる)。最近は業態的に言うと「カフェ」に当たるような店でウィスキーやカクテルを飲ませるということが流行っている気がして、そういう店を利用する方法もあるが、ちゃんとしたバーテンダーがいなくてアルバイトの女の子がハイボールを作ったりしていて、とりあえず味見するという以上に「ウィスキーを勉強しに行く」には向かない場合も多い。

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ショットバーで酒を飲むというのは「飲食」ではなくてやっぱり「社交」である。だから、ある程度自分のキャラというものを持ちながら、周りの雰囲気にふさわしい言動ができなければならない。「テーブルトーク・ロールプレイングゲームのようなもの」だというちょっとした覚悟が必要なのだが、むかし読んだテーブルトーク・ロールプレイングゲームの入門書に「なりきり過ぎはウザい」と書いてあって、これはバーで酒を飲むときも同じである。バーで酒を飲む際に最低限必要なキャラを考えてみると、

  1. 成人している
  2. 酒が飲める
  3. 金が払える
  4. 目立ちたがらない
  5. 酔っ払わない
  6. 年長者と酔っ払いと喫煙者を嫌わない
  7. 男なら女を口説かない、女なら男に秋波を送らない(必須!他所でやれ)
  8. ひとの話を聞いてそれなりに理解・記憶できる
  9. 自分の話が通じていないと思ったらすぐ口を閉じることができる
  10. ひとにいじられても固まらない
  11. ケンカしない

あたりを「演じる」ことができれば(本当は違ったとしても)バーで追い出されずに酒を飲むことができると思う。そもそも酔っ払いの群れに首を突っ込むわけだから、キャラが薄ければいじられ、キャラが濃過ぎるとケンカになるものだ、ということが分かっていれば、あとはなんとかなると思う。ひとつ言っておくと、終電には必ず乗ること。終電を過ぎてバーに居つくと仕事を終えたコックや板前、キャバ嬢やホステスが店にあふれてきょう一日のストレスをぶちまけ店がカオスになり、シロウトがそれを乗り切るにはよほどのキャラの濃さと懐の深さが必要になる。「人生勉強」にはなるかもしれないけれど、「ウィスキーを勉強する」という次元を完全に逸脱する。

※ぼくの書いていることを読んで「ショットバーってそんなに社交的に『濃い』場所じゃないだろう?」と思う向きもあるかもしれない。これはぼくが関西人で、大阪でショットバーに入り浸った経験があるからだ。よその土地ではこうではないかもしれない。

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ウィスキーを勉強するためにはとにかく「親切なバーテンダーにめぐり会う」ことがすべてである。バーテンダーというのはたいてい技量があればあるほど客に対して礼儀正しく親切なものなのだが、じゃあそういうバーテンダーにどうやったらめぐり会えるかというとこれはもう運である。ひとつだけ言っておくと、ひとは自分と釣り合う人間と出会うようにできているので、礼儀正しく親切なバーテンダーに出会いたかったら自分が礼儀正しく親切な人間になるべきだ。

そういうバーテンダーに出会えたら、できるだけ開店直後の客の少ない時間に行って、ひと晩に飲む量は最大で2杯までにして、ふつうに飲み終わったらすみやかに店を出る。「一軒の店で飲むのは2杯までにし、ハシゴしたければとりあえず次の店まで歩いて自分の酔い加減を確認せよ」という金言をぼくはどこで学んだか忘れたが(村上春樹かな)、一軒で3杯以上飲んではこの金言の真実を思い知る。村上春樹はたしか「ウィスキーは2杯まで、3杯目以降は味なんてしない」とも書いていたはずだが、これも真実である。「ウィスキーを勉強する」ためであればひと晩に飲む量は最大で2杯まで。続きが飲みたければとりあえず家に帰るべきだ。

美学を語っていると思うだろうか。違う。最終的に心配すべきは肝臓でなければ財布の中身である。酒のせいで財布を空にしてはいけない。ぼくが言いたいのはそれだけだ。

バーを出る時のあいさつは、いかに夕方早い時間でも「おやすみなさい」である。「こんばんは」と言って店に入り、「ごちそうさま」と言ってお金を払い、「おやすみなさい」と言って店を出る。これは、そういうものである。

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(2016年07月)

鍋(電気グリル鍋)でご飯を炊く方法

鍋でご飯を炊く方法についてはネット上に情報がいっぱいあるが、ぼくのやっていた方法に比べてどれも水加減・火加減が難しい気がする。ぼくの方法にもコツのようなものはあり、「これが日本一簡単なご飯の炊き方だ」とまでは言わないが、とりあえず水加減・火加減についてはほぼ「何も考えなくていい」ので、いちおう紹介しておく。

「鍋で炊く」というとふつうはガスこんろの上に鍋を置いて使うが、「簡単リゾット」を紹介するにあたり、「ひとりぐらしの方は電気グリル鍋があれば十分です」みたいな話をしたので、その電気グリル鍋でご飯を炊いてみる。たいていの電気グリル鍋には「保温」というモードがあると思うが、これを利用するとご飯は簡単に炊ける。ガスこんろを使う場合は「保温」モードの代わりにトロ火にする(ちなみにトロ火とは「これ以上火を小さくするとガスが出なくなって火が消える」という限界ギリギリの火加減のことである。それで、厳密に言うとトロ火の火力はガス器具によって異なるため、「大きなガスこんろに小さな鍋をしかけてトロ火にすると鍋に対して火が強過ぎておこげができる」といったことも発生しなくはない。それでも一般家庭で使うガステーブルカセットこんろで2~3合のご飯を炊く場合はおそらく心配することはないだろう)。

  1. 米は洗ってざるに上げ15分程度放置する。
  2. ざるの米を鍋に入れ、容積で米の倍より少し多い程度のお湯を入れてふたをし、強火にかける。
  3. 沸騰してきたらふたを取る。米のところどころに穴が開いて火山の噴火のように沸騰していると思うので、しゃもじで全体に混ぜ、一面均一に沸騰する状態にする。
  4. 3.の状態で、強火のまま2~3分煮る。もし1分と経たずに水分が煮飛んでしまうようならお湯を適当に足す(このとき米は混ぜない。上からドボドボ足すだけである)。
  5. 水分の残り具合を見ながら適当なところでふたをし、電気グリル鍋なら「保温」、ガスこんろならトロ火にする。このとき、どんな状態でふたをするかによって炊き上がりの米の硬さが決まる。水分が残って鍋が「ブツブツ」言っている状態でふたをすると柔らかく、水分が煮飛んで「チリチリ」言っている状態でふたをすると硬くなる。最初に入れたお湯の量が多過ぎても強火で十分に煮飛ばせばちゃんとした炊き上がりになる。
  6. 5.の状態で、「保温」(トロ火)できっちり10分加熱する。キッチンタイマーを使うとよい(100円均一ショップに売っている)。途中でふたを取ってはいけない。
  7. 10分経ったら火を止め、きっちり15分蒸らす。これもタイマーを使うとよい。途中でふたを取ってはいけない。
  8. 15分経ったらふたを取り、しゃもじで全体にひっくり返す。これで炊き上がりである。

1.と2.は「湯炊き」という方法だが、これは単に調理時間を短縮するための技術であって、この炊き方の本質とは関係ない。「湯炊き」でない世間一般の方法だと、1.と2.はたぶんこんな感じになる。

  1. 米は洗って30分以上水につける。
  2. 米を鍋に入れ、容積で米の倍より少し多い程度の水を入れてふたをし、強火にかける。

なんで水につけると30分以上かかるのにざるに上げると15分でいいのか、ぼくには分からない。だがとにかくそうである。ぼくの知る限り、飲食店では洗った米はたいていざるに上げる。一般家庭でその方法を採用していけない理由はないし、とにかくそうする方が調理時間が短くて済む。

ぼくの方法が世間一般と異なっているのは3.~5.である。「ふたを取る」「全体に混ぜる」「そのまま強火で煮飛ばす」。この3つが揃っている方法は、たぶん今のところネット上にはない。ふたを取らずに炊くと、炊き上がるまでどんな炊き上がりになるか分からないが、ふたを取ってしまうと、再びふたをする時点でどんな炊き上がりになるかほぼ想像がつく。水加減については、少なければふたを取っている間に足せばいいし、多ければふたを取っている間に煮飛ばせばいい。火加減は、その間ずっと強火である。とにかく、ぼくはこの方法がいちばんストレスなくご飯を炊くことができる。この方法の場合、ふたを取ってから再びするまでは鍋の前(あるいはそば)にいる必要があるが、おそらくは3~4分の話である。

6.~8.はまあふつうだろう。少し違う時間を書いている記事も見かけるが、とりあえずぼくはこうしている。電気グリル鍋の場合、スイッチを切っても加熱機(電熱であれ IH であれ)の温度がすぐには下がらないので、実際には「15分保温・10分蒸らし」みたいなことなのかもしれない。とにかく、ぼく自身は「10分保温・15分蒸らし」で炊く。

2合の米を「象印」の電気グリル鍋で炊いた実例写真をお目にかける。まず「米を洗ってざるに上げ15分放置したところ」。洗う前には半透明だった米粒がきれいに真っ白になっている。

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ざるの米を鍋に入れ……

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一例として450ccのお湯を入れる。上述したように500ccでもいいが、400ccだとちょっと少ないんじゃないかという気がする(あとで足せばいいことだが)。

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ふたをして強火で加熱すると、この時は4分で沸騰している。ふたを取ると4ヶ所で沸騰しているのが分かる。

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沸騰している箇所以外の米はひっついて固まっているのでこれをしゃもじでかき混ぜてバラバラにすると、全体に均等に沸騰するようになる。この状態が少なくとも2分程度持続する水加減が必要で、足りなければお湯を足す。

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2分煮たところ。このくらいでふたをする。新米だと柔らかく炊き上がるのでもう少し煮飛ばした方がいい。また硬めが好きな方ももう少し煮飛ばした方がいい。ちなみに上で米が煮える音の話をしているが、この写真の状態だとしゃもじでかき混ぜた直後と音はほとんど変わらない。硬めが好きだからと言ってあんまり「チリチリ」言わせると鍋によってはおこげになる場合もある。

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10分保温し15分蒸らす。ふたを取った直後の写真を撮るのを忘れて、しゃもじで半分返してしまっている。

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全体に返したところ。ベチャベチャでもパラパラでもなく、ちゃんと炊き上がっている。ここまで、米を計量して洗い始めてから52分。1時間以内に食べられる状態になるのは「湯炊き」だからだろう。

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炊き上がったご飯は、ひとりぐらしで電子レンジがある場合は温かいうちに1食分ずつ保存容器(100円均一ショップに売っている。日用品は何でも100均に売っている時代だ)に入れて冷まし、冷凍しておく。家族のいる家庭だとおひつにでも移していただくといいのかもしれないが、家族構成によっては2合ぐらい1食で食べてしまうかもしれない。

*

同じ要領で炊き込みご飯を作ることもできる。この場合水加減と味の濃さが直結するが、ひとつの目安として「2合の米に500ccのだし」でお作りいただくといいかと思う。たとえばぼくは2合の米を洗ってざるに上げ、3倍濃縮のめんつゆ50ccを水やシイタケのもどし汁あわせて450ccで割って500ccのだしで炊いていた。具はヒジキ・ニンジン・干しシイタケを戻したもの・レンコンである。こんなものでも作って冷凍しておくと、忙しかったり疲れていたりして「食べられれば何でもいい」という気分のときに電子レンジで解凍し、浅漬けと簡単なスープ、物足りなければ充填豆腐か缶詰でもひとつ開けて、1食できあがりである。 

ふつう炊き込みご飯というと鶏肉や薄揚げなどを入れてちょっとボリュームを出すと思うが、その場合炊飯器だと内釜・内ぶたに油がつく。特に内ぶたを一度汚してしまうと臭いがいつまでも残って閉口するが、その点グリル鍋だと洗うのが楽な気がする。むかしテレビで「米2合にシーチキン1缶・なめたけ1びんを入れて炊く」というレシピを紹介していて、やってみると美味かったが、シーチキンのような油ギトギトのものを米に炊き込んでも、グリル鍋であれば簡単に洗い落とせる。鮭や豚肉など、炊飯器だと臭いの残りそうな具材でも、グリル鍋であれば躊躇なくご飯に炊き込むことができる。だしは濃縮めんつゆで十分美味い。お試しいただきたい(参考)。

ぼくは赤飯もグリル鍋で炊いていた。当時の日記にこう書いてある。

インターネットで調べるといろいろ面倒くさそうなことが書いてあるが、要は茹でた小豆をもち米入りのお米で炊けばいいんじゃないかと思い、半日水につけた小豆を茹でた鍋に洗って1時間水につけたもち米入りお米を入れて普通に炊く。ふつうの感覚で炊くと少し柔らかくなり過ぎる気もするが、特に赤飯として違和感を感じない。

数字をきちんと記録しておけばよかったのに、と今になって思う。ぼくの悪い癖である。うろ覚えでレシピを再現するとたぶんこうなる。

  1. 小豆ひとにぎり(50~80ccぐらい)を半日以上水につけておく。
  2. もち米1/2カップとふつうの米1.5カップ(ぼくはたぶんこんな比率だったと思うが別に半々でもいいと思う)を混ぜてふつうに洗い1時間水につけておく。
  3. 1.の小豆と水2カップを鍋に入れふたをして強火にかけ、沸騰してきたらふたをしたままかろうじて沸騰が続くぐらいの弱火にして20分(ぐらいだったと思う……)煮る。
  4. なべのふたを取って2.の米を入れ、水(お湯でもよい)を鍋の煮汁とあわせて500cc程度になるように加え、強火にする。あとは上記の要領で少し硬めを目標に炊く。

こんな無頓着な方法でちゃんと赤飯ができるのは、「最初に水加減をせずふたを取って水分を煮飛ばしながら様子を見る」というぼくの炊き方のおかげである。豆を煮る時間がうろ覚えなのだが、豆を煮ている鍋でそのまま連続して赤飯に炊き上げるので、最初に煮るのは20分でよかったと思う。赤飯は腹持ちが良いし冷え対策にもなる(小豆ももち米も身体を温める)ので、上記のひじきご飯と合わせてぼくの冷蔵庫(冷凍庫)ではずっと定番だった。

*

この「ふたを取る」「全体に混ぜる」「そのまま強火で煮飛ばす」というご飯の炊き方を、ぼくは母から習った、はずである。ぼくが子供の頃、わが家は文化鍋でご飯を炊く生活をしており、その頃この方法で何度もご飯を炊いたのである。ところがいま母にきくと「そんな方法を教えた覚えはない」という。いわゆる「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう噴いたら火を引いて、赤子泣いてもふた取るな」で炊いていたはずだというのである。ぼくは逆に、この有名な俚諺(りげん)どおりの炊き方を試したことが一度もない(今やれと言われてもできない)。ご飯というのは一度炊き損じてしまうとその回のご飯がなくなるまで2、3食は食べ続けなければならない。だから、失敗するおそれのある炊き方はイヤなのだ。そして、そんな失敗するかもしれない難しい方法を、母は子供に教えなかったはずなのだ。

真相は、分からない。ただ、たとえぼくがそれを母から習ったのだとしても、母自身が確信を持って編み出した方法ではない以上、この方法は昔から世間のどこかには存在していたはずの方法なのだ。それが、自動炊飯器の普及で絶滅して、「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」の俚諺だけが生き残っていたところを、ぼくがこうやって不死鳥のごとく復活させた格好になったのだ。言いたいのは、たとえネット上でこの炊き方を推奨しているのがぼくだけだったとしても、この炊き方は少なくともぼくが編み出したものでも母が編み出したものでもなく、世間のどこかに昔から存在したはずの方法だ、ということだ。

(2014年6月)

簡単リゾット~炊飯器の要らない自炊生活~(レシピ編)

以下は「簡単リゾット」のサンプルレシピである。この記事からお読みいただく方は、「簡単リゾット」とは何かについて、ぜひ前記事をご一読いただきたい。

  1. ジャガイモのリゾット・カレーコンソメ味
  2. カレーリゾット・自由軒名物カレー風
  3. 豚肉とマイタケのカレーリゾット
  4. 鶏肉のリゾット・イタリアントマト味
  5. エビとキノコのリゾット・イタリアントマト味
  6. 鮭とヒジキの和風リゾット
  7. 豚肉とマイタケの和風リゾット
  8. 魚と青菜のエスニック風リゾット
  9. 中華風キュウリと薄揚げのリゾット
  10. 中華風キュウリとエビのリゾット
  11. ジャガイモ・ベーコン・セロリのリゾット
  12. おわりに

(各料理名をクリックするとレシピに移動する。戻る場合はブラウザの「戻る」ボタンをお使いいただきたい。)

まずスープに洋風の固形スープの素を使うもの。「ジャガイモのリゾット・カレーコンソメ味」。

Risotto05

  1. ジャガイモ1個(小さければ2個)は皮付きのままナイロンたわしなどでよく洗って5mm厚さぐらいに切る。ニンジン1/2本とタマネギ1/4個はさいの目に切る。
  2. 1.を鍋に入れ、固形スープの素1個・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油大さじ1・カレー粉小さじ山盛り1・塩少々を加える。このあと煮つまるにつれて塩辛くなるので、この段階の塩加減は「塩が入っていることがかろうじて分かるぐらい」のほんのり塩味にする。米が固まるので木べらなどでほぐしてバラバラにし均等に煮えるようにしたら火を「鍋の表面がブツブツ言い続ける程度」(調理器具にもよるがおおむね中火から強火の手前ぐらいの間)に落としふたをせず10分煮る。
  4. 10分経ったら木べらなどで底までぐるっとかき混ぜ味見をして米の堅さと塩加減を確認する。煮つまった分塩味が立ってくると思うがそうなっていなければ塩を加え、目標よりちょっと薄味にする。米が堅いのに水分が煮飛んでしまっている場合、お湯(水はダメ)を少量ずつ差す。ふたなしでさらに5~8分煮る。
  5. 時間が来たら木べらなどで底までかき混ぜ味見をして米の堅さと塩加減を確認する。水分が煮飛んでいるにもかかわらずまだ塩味が薄い場合、塩だけ加えるときれいに混ざらず味にムラが出来てしまうので少量のお湯で溶きながら米に混ぜ込む。
  6. 好みの煮上がり(芯が残っている「アルデンテ」・米に完全に火が通ってもっちりと煮上がった状態・米が少し煮溶けて雑炊っぽくなった状態、のいずれか)になったら火からおろし、器に取って食べる。

調理中の写真を掲げる。まず「米以外の具材とスープの素を鍋に入れたところ」。

Risotto01

次に「米・油・調味料を入れてよく混ぜ火を若干落としたところ」。アクなんかは取らない。

Risotto02

「10分煮込んだあと木べらでぐるっとかき混ぜたところ」。この時点でどの程度汁気が飛んでいるかは火加減と気候によるが、3カップの水に1/2カップの米だとここでお湯を足す必要はたぶんない。

Risotto03

 

「煮上がり」。汁気は若干多めだが器によそうと冒頭の写真のようになる(ちなみに冒頭の写真はこの煮上がりのおおむね半分を皿に盛ったものである)。ひとり暮らしの場合、このまま鍋から直に食べてもいい(ぼくはたいていそうしていた)が、鍋が熱いのでやけどしたり机を痛めたりしないよう気をつける。

Risotto04

この料理は少し強めの塩で「カレーコンソメ味のスナック菓子」みたいな味になれば正解である。カレー粉に含まれるターメリックの土臭い香りが皮つきジャガイモに合う。好みで鶏肉やエビ・イカ・アサリなどを加えることもできるが、この料理はあんまり複雑な味にしない方がおいしい。

ちなみに、固形スープの素とカレー粉の組み合わせの代わりにいわゆる「カレールウ」を使って「自由軒」の名物カレーみたいなのを作ることもできる。レトルトカレーを買ってごはんに混ぜる方が早い気もするが、参考までに作ってみる。

Curry_risotto03

  1. 合挽きミンチを100g程度用意する(小分けして冷凍しておくとよい)。ニンジン1/2本とタマネギ1/4個は荒みじんに切る。
  2. 1.を鍋に入れる(冷凍のものは凍ったままでよい)。カレールウ1皿分(1パック5皿用のルウであれば1/5パック分)・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油小さじ1(ルウに脂があるのでサラダ油は控えめにする)・塩少々を加える。あとは最初のレシピと同じ要領で煮上げる。この料理は焦げる場合があるので10分を過ぎたら2分ごとに底までかき混ぜるようにする。
  4. 盛り付けの際、好みで卵黄を落とす。

Curry_risotto01

Curry_risotto02

いま冷凍の合挽きミンチを使ったが、買ってきた食材を小分けして冷凍する要領を参考までに写真でご覧に入れる。まずは買って来た食材。

Foodstuff01

これを下の写真のように小分けして冷凍する。小分けする際はできるだけ平べったい形にまとめておくと冷凍も解凍も速くなる。

Foodstuff02

カレールウを使い、好みでさまざまな具を煮ることもできる。これも参考だが、あとで紹介する「豚肉とマイタケの和風リゾット」の具をカレールウで煮たもの。

Pork_curry04

  1. 豚肉・マイタケ・さやいんげん・レンコン・ニンジン・タマネギを「豚肉とマイタケの和風リゾット」の要領で切る。
  2. 1.を鍋に入れる(冷凍のものは凍ったままでよい)。カレールウ1皿分・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油小さじ1・塩少々を加える。あとは「カレーリゾット・自由軒名物カレー風」と同じ要領で煮上げる。

調理写真は電気グリル鍋を使ってレシピの倍の量を作ったもの。水(この場合は熱湯)を最初に4カップ加え、さし湯なしで煮上げたのだが、この電気グリル鍋は火力が弱いのか、最初に沸騰するまで30分かかった(豚肉・さやいんげん・レンコンが冷凍だったし量も倍だったからだろうけれど)。煮上げるのもずっと強火のままである。

Pork_curry01

Pork_curry02

カレールウで参考料理を2例も作ってしまったが、ここで話を洋風の固形スープの素を使ったレシピに戻す。「鶏肉のリゾット・イタリアントマト味」。

Tomato_and_chicken04

  1. 鶏肉は一口大に切ったモモ肉唐揚用か手羽元を買ってきて1人前(自分の食べたい量)ずつ冷凍しておく。さやいんげんは筋を取って塩茹でし冷凍しておくか冷凍のものを買ってくる。ニンジン1/2本は適当な長さで拍子木に切りタマネギ1/4個は薄切りにする。
  2. 1.を鍋に入れる(冷凍のものは凍ったままでよい)。固形スープの素1個・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油大さじ1・トマトケチャップ大さじ1・ドライオレガノひとつまみ(容器にもよるが5~6振り程度)・コショウ1振り・塩少々を加える。あとは最初のレシピと同じ要領で煮上げる。この料理は焦げる場合があるので10分を過ぎたら2分ごとに底までかき混ぜるようにする。

調理写真は上と同じ電気グリル鍋でレシピの倍。熱湯4カップでずっと強火のまま煮上げる。

Tomato_and_chicken01

Tomato_and_chicken03

トマト料理にドライオレガノを使うと、たとえトマトケチャップでもまともな「イタリアン風味」が出る。ただケチャップは非常に甘いので大人の舌だとやや閉口する。トマトピューレや缶詰トマト、あるいは生のトマトを使ったりもできるが、いずれも開封して1人前使ったあとの残りが日持ちしない。今回ぼくの使ったのは大さじ1杯分ずつ小分けにされた「カゴメトマトペースト・裏ごしトマト6倍濃縮」である(リンクは「アマゾン」だがぼくは「西友」で買った)。「6倍濃縮」と書いてあるがこの料理に使って濃過ぎるということは別にない。

Tomato_paste

この料理は鶏肉の代わりに豚肉やシーフードでも作れる。「エビとキノコのリゾット・イタリアントマト味」。

Tomato_and_prown03

  1. エビは背わたを取るかあらかじめ取ってあるものを買う。シメジは石づきを取り小房に分ける(これもあらかじめ冷凍しておける)。さやいんげん・ニンジン・タマネギは鶏肉のときと同様に切る。
  2. 1.を鍋に入れる(冷凍のものは凍ったままでよい)。固形スープの素1個・水3カップを加えて強火にかける。
  3. あとは鶏肉のときと同じ要領で味つけして煮上げる。

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次に濃縮めんつゆを使った和風のもの。「鮭とヒジキの和風リゾット」。

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写真はしっかりしょうゆ色がついているが、実はこれだと関西人のぼくの舌には少し味が濃い。でも酒には合うかもしれない。この辺は好みである。

  1. 鮭切り身(生でも甘塩でもよい)は一口大に切る(切れば食べやすく見た目もよいが切らなくてもよい)。ニンジン1/2本はいちょう切りにし、薄切りにしたレンコンはニンジンと同じぐらいの大きさに切る。長ネギ1/4本を小口切りに、なければタマネギ1/4個を薄切りにする。
  2. 1.と乾燥ひじきひとつかみを鍋に入れる(鮭が冷凍であれば冷凍のままでよい。)。水3カップ・濃縮めんつゆ大さじ1~2を加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油大さじ1を加える。鮭が塩鮭でなければ塩も少々加える。あとは最初のレシピと同じ要領で煮上げる。10分経った段階で味見してめんつゆを加えるか塩で味を調えるかする。鮭が塩鮭の場合予想外に塩辛くなる場合もあるので最初は薄味で煮始め10分経ったところではじめてちゃんと味つけをする。

この料理はベチャベチャの煮上がりだと美味しそうでないのでちょっと強火で水分を煮飛ばす。ちなみに写真のレンコンはいったん切って茹で冷凍したものを使っている。レンコンは傷みやすいので長期保存には茹でて冷凍しておくとよい。

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Salmon04

和食を食べ慣れていれば、この料理はいくらでもアレンジが効く。魚と青臭い野菜の組み合わせだけ避ければ、どんな食材でも使える。コンソメ味と異なり、こちらは具だくさんの方が美味い。もう一例「豚肉とマイタケの和風リゾット」。

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こちらはめんつゆ控え目で塩で味を調えた写真。「牛丼は吉野家より松屋の方が好き」という関東風の舌の方はもう少しめんつゆ多めで煮るといいだろう。

  1. 豚バラ細切れは一口大に切り、マイタケは小房に分ける。さやいんげん少々を1cm長さほどに切り、ニンジン・レンコン・長ネギ(なければタマネギ)は鮭の時と同様に切る。
  2. 1.を鍋に入れる(冷凍のものは冷凍のまま。)。あとは鮭の時と同じ要領で味つけして煮上げる。

味つけは10分経ったところから味見しつつ仕上げる。塩味だけでなく甘味もだしも薄いようなら濃縮めんつゆを加え、ある程度味が濃くなってきたら塩だけで味を調える。ただし最初まったくめんつゆを加えず水だけで肉や魚を煮てしまうと味が抜けてカスカスになってしまうので最低でも大さじ1は入れておく。

Pork01

Pork04

めんつゆを使った和風リゾットとしては、「鶏モモと長ネギをめんつゆで煮て仕上げにとき玉子を流しふたをして60~90秒蒸らし『親子丼風』」とか「牛肉とタマネギだけをめんつゆで煮て仕上げに紅しょうがをトッピングし『牛丼風』」とかいくらでも思いつくが、ぼく自身は野菜多めの具だくさんに煮上げるのが好きなのでここでは実演しない。というか、丼もののトッピングはレトルトで売っていたりするので(美味い不味いはともかく)、ふつうにご飯を炊いてそれをかければいい。そういう選択肢を持つために、(電気)グリル鍋でふつうのご飯を炊く方法について別稿で説明しておく

次は「ナンプラーを使って魚を煮る」という荒業、「魚と青菜のエスニック風リゾット」。

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この料理は味つけにナンプラーを使うので、ナンプラーの原料であるイワシで作るのが味のバランスとしてはいちばんよいのだけれど、サバ・サンマ・ブリのあら・タチウオなどでも作れるし、ぼく自身はスズキやアカウオで作ったこともある。ナンプラーに味が負けない魚であれば何でもいい。今回はサバが安かったのでサバで作ってみた。

  1. サバは一口大に切る(切らなくてもよい)。青菜はホウレン草の場合茹でて刻む(冷凍できる)。小松菜の場合は生でもよい。タマネギ1/4個は薄切りにする。ニンニク1かけはつぶすか適当に刻む(チューブのおろしにんにくかガーリックパウダーを適量使ってもいい)。鷹の爪は両端をちぎって中を爪楊枝などでつつき種を除いておく(鷹の爪を触った手で目をこすったり絶対にしないこと)。
  2. 1.を鍋に入れる。ナンプラー大さじ1~1.5・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油大さじ1を加える。あとは最初のレシピと同じ要領で煮上げる。味が薄いと思ったらナンプラーと塩で調整する。
  4. 食べるときにレモンやライムをかけてもいい。

写真はサバの半身を水4カップと米1カップで煮たもの。途中火が弱かったせいか汁気の多い煮上がりになってしまっているが、たぶんもう少し汁気の飛んだ方が美味そうに見える。「美味そう」で言うなら、この料理は魚を一口大に切らずに切り身なら切り身、半身なら半身、まるごとならまるごとのまま煮て盛り付ける方が美味そうな気がする。ぼく自身はずっとそうしてきたのだが(品がないかと思って今回は一口大に切ってみたのだが)、骨の処理も細切れにしてしまうよりまるごとの方が楽である。

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「魚・青菜・ニンニク・鷹の爪」という組み合わせはタイの伝統料理か何かにならってのことだと思うが記録も記憶もない。コメントしておくべきは、この料理はレシピを読んで想像するよりずっと淡白な味だということだ。

洋風・和風・エスニック風と来て、次は中華風。鶏ガラスープの素を使った「キュウリと薄揚げのリゾット」。

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キュウリの油炒めは近年ポピュラーになりつつあると思うし(味つけも和風・洋風・中華風・エスニック風といろいろある)、冬瓜を煮て食べるのも珍しいことではないが、キュウリを「米に炊き込む」のはたぶんぼくの独創である。この発想に深い意味はなく、単にこれを思いついた当時キュウリが他の野菜より安かっただけである。だがやってみると案外イケる。鶏ガラスープに塩・コショウ・ショウガを利かせてシンプルな味で食べるのが美味い。ちなみに、キュウリを米に炊き込むことに抵抗のある向きには、代わりに青味としてグリーンアスパラ・ブロッコリー・小松菜・チンゲン菜などをご利用いただけると思う。

  1. 薄揚げ1/2枚は短冊に切る。キュウリ1本・ニンジン1/2本は拍子木に切る。タマネギ1/4個は薄切りにする。ショウガ1かけは適当に刻む(チューブのおろししょうがを適量使ってもよい)。
  2. 1.を鍋に入れる(薄揚げやショウガを冷凍している場合は凍ったままでよい)。鶏ガラスープの素小さじ大盛り1・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油小さじ2ぐらい(薄揚げを油抜きした場合は大さじ1)・コショウ1振り・塩少々を加える。香りづけにゴマ油を少し加えてもいい。あとは最初のレシピと同じ要領で煮上げる。

写真は電気グリル鍋を使って上記レシピの倍の量を作ったもの。ただし都合により野菜が若干少ない。

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この料理に使う薄揚げは1パック2枚入りのふわふわのものではなく、1パック1枚入りで少し厚みがあってしっとりしているものがよい。写真は参考商品、「いそかわ」で¥78(税別)。

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薄揚げの代わりに鶏肉・エビ・貝柱などを入れても美味い。エビで作ったものを参考までに写真だけ掲げる。レシピは上記の薄揚げをエビに変えた以外まったく同じである。

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ところでぼくは、洋風のレシピでもあっさり塩味に仕立てる場合、洋風固形スープの素ではなく鶏ガラスープの素を使う。というか、次に紹介する料理、油がオリーブオイルなら洋風、ごま油なら中華風である。「ジャガイモ・ベーコン・セロリのリゾット」。

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  1. ジャガイモ1個は皮をむいて5mm厚さぐらいに切る。ベーコンは短冊に、セロリは2mm厚さぐらいに切る(どちらも量はジャガイモとのバランスを考えながら好きなだけ)。タマネギ1/4個は薄切りにする。
  2. 1.を鍋に入れる。鶏ガラスープの素小さじ大盛り1・水3カップを加えて強火にかける。
  3. 煮立ったら米1/2カップ・サラダ油大さじ1・コショウ1振り・塩少々を加える。あとは最初のレシピと同じ要領で煮上げる。

ベーコンの代わりにエビやイカもいいだろう。しかし、何につけ「あっさり塩味」がいちばん食べ飽きないように思うのは、ぼくが関西人だからなのか。

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鶏ガラスープの代わりに「ウェイパー」を使い、白菜・ニンジン・タマネギ・タケノコ・シイタケ・キクラゲ・豚肉・イカなどをいっしょくたに煮ると「中華丼風」になったりするだろうと思う。この場合あまり強火にせず汁気多め粘り多めで煮上げるのもありだろう。ただ料理を作り慣れない人があまり一度に多くの食材を扱うのは現実的ではない。

以上でレシピの紹介は終わりである。最初に考えていたのは上記メニューの「1.・4.・6.・8.・9.」の5種類だったのだが、作っているうちに倍増してしまった。レシピの応用の仕方の参考になれば幸いである。

最後にひとことだけ書いておくと、このブログは著作権を放棄していないので、文章や画像はもちろんのこと、ここに載せたレシピ自体にも著作権がある。もしこれらのレシピを商業利用したいとお考えの方がいらっしゃれば(いらっしゃれば)、事前にご連絡いただきたい。商業利用でないご紹介(このページにハイパーリンクを張る方法による)は基本的に自由でありご連絡も不要だが、レシピをそのまま「クックパッド」などに投稿されるのはちょっとどうかと思うので、商業利用でなくても単なるご紹介を越えた「二次利用」をお考えの方はご連絡いただけた方がいいかと思う。

(2014年6月)

簡単リゾット ~炊飯器の要らない自炊生活~

Tomato_and_chicken02

これからご紹介するのはぼくが今から10年ほど前、習いたての HTML で最初に書いた文書『炊飯器のない生活』(未公開)の改訂版である。

ひとりぐらしでやむなく外食している方にとって、自炊をすることはいろいろとメリットがありますが、炊飯器を使ってごはんを炊きみそ汁とおかずを加えるという一般家庭の献立が自炊生活にふさわしいかどうかは疑問です。実はお米は炊飯器がなければ調理できないわけでも、また「白ごはん」としてでなければ食べられないわけでもありません。ここではイタリア料理の「リゾット」を応用し、インスタントラーメンと同じ程度の手間で自炊生活に幅広いバリエーションを持たせる方法を紹介します。

こういう「まえがき」で『炊飯器のない生活』は始まる。第1章「自炊のメリット/デメリット」は割愛し、第2章・第1節「ひとりぐらしの炊飯器生活」から、炊飯器を使って自炊するとどんなふうに自炊生活が行きづまるかという話を。

その1.みそ汁とおかずを作ってみました。ところがひとりぐらしなのでどうしても食材があまりがちになる、あるいは作った料理があまりがちになる、冬場はいいが春から夏になり気温が上がると腐るものが出始める。腐った食材や料理を捨てるのはいろんな意味でストレスになり、料理からは遠ざかることに。 

その2.料理をやめても、みそ汁とふりかけ、あと漬物と冷奴か納豆、これで食事にはなります。栄養バランスも悪くないかも。しかしこれではさすがに食べ飽きてしまい、気づいてみると外食がちな生活に。 

その3.本格的な料理に再び挑戦。ところが四畳半やワンルームで焼肉や炒め物をすると、油煙でデスクも本もPCも油だらけに。書斎の片隅で料理をしていることを改めて自覚し、書斎の機能を犠牲にしてまで料理をすべきなのか、と考えるように。 

その4.おかずはスーパーで買ってくることに。ところが気づいてみると、これではなまじ外食するより高くつく。経済的に好ましくないのでやめに。 

第2章・第2節は「発想の転換」。お米は炊かなくても食べられる、ということを知った衝撃について。

そういうわけで、ぼくは社会人になってからは、基本的に「完全外食生活」をしていました。一時期はガスコンロもなく、電気ポットでお湯を沸かすだけ。そういうぼくが、どんなきっかけだったか忘れたのですが、イタリア料理に興味を持ち、本を1冊買いました。そこに紹介されていたのが「リゾット」という料理です。「洋風雑炊」という表現を聞いたこともありましたが、ミラノで修行したというその著者の紹介している料理は「雑炊」とは全く違うものでした。

さて、リゾットと雑炊の違いをちゃんと認識していただくことが、ここから先の話には必須である。

米とスープを組み合わせた料理として日本でポピュラーなのは「リゾット」「雑炊」「クッパ」だと思いますが、 

  • リゾット:お米をスープで煮たもの。
  • 雑炊:ごはんをスープで煮たもの。
  • クッパ:スープにごはんを入れたもの。

です。

(上掲リンクは「ウィキペディア」だがこれは今回張ったもの。2004年当時「ウィキペディア」にこれらの記事はなかったと思う。)

日本に来たヨーロッパ人(イタリア人)が炊飯器で炊いたご飯でリゾットを作ることは皆無ではないし、またレストランなどではあらかじめスープで煮込んでおいた米を注文に応じて人数分調理し直して出したりすることもある(参考)。だが基本的に「リゾット」とは米を「洗わない」「水に漬けない」「蒸らさない」でスープで煮る料理である。そもそもヨーロッパには炊飯器というものがないのだ。炊飯器のない国の人たちのお米の食べ方を応用しようというのが、「炊飯器のない生活」というこの文章の原題の意味である。

ヨーロッパ人が「パエリャ」や「リゾット」で米を「煮る」時には、米を「洗わない」「水に漬けない」「蒸らさない」で調理します。「洗わなくてヌカ臭くないですか?」という疑問ですが、経験的に言うと、煮る前に油で米を炒める(「熱した油を米になじませる」というのが正しい)と、ヌカが油を吸ってヌカ臭くなりません。「蒸らさない」については、「パエリャ」を蒸らすように紹介している記述もときどき見るように思いますが、「リゾット」は決して蒸らさず、お米を「アルデンテ」に煮上げる料理です。 

もっとも、日本人が食べる場合はむしろ「アルデンテ」より少し長めに煮てさらに少し蒸らした方が抵抗のない食感になるかもしれない。

第2章・第3節は「リゾットを常食に」。

「リゾット」。お米の状態から30分以内に食べられるようになる「リゾット」。米とおかずをいっしょに調理できる「リゾット」。肉も魚も野菜も調理できる「リゾット」。発想しだいでは洋風にも和風にも中華・エスニック風にも味つけできる「リゾット」。日本でもっとも安価に入手できる穀物である米を使い、実質的にはインスタントラーメンと同じ程度の手間で、食べたい時に食べたいだけ好きな量を作ることのできる「リゾット」。そして、油の跳ねない、油煙の上がらない「リゾット」。イタリア料理だけど、スパゲティに必須のにんにく、日本ではそれを食べることがややエチケット違反だと思われがちなにんにくを、必ずしも要求しない「リゾット」。

気づいてみたらリゾットを常食にするようになっていた、そういう感じでしょうか。

さて、第3章で「簡単リゾット」とは何かを説明する。「米をスープで煮る」、けれど本式のリゾットより「簡単」な調理法とは。

リゾットとは「お米をスープで煮たもの」だと説明しましたが、では実際にはどうやって作るものなのでしょうか。 まず、たいていのイタリア料理本に書かれている方法を紹介します。

  1. たまねぎのみじん切り大さじ1を油で炒める。
  2. たまねぎが透明(あるいはきつね色)になったら米1/2カップを洗わず加えて油をなじませる。
  3. 白ワインを大さじ1加えてさらに炒め、アルコールを飛ばす。
  4. スープ3カップを加え、沸騰したら弱火にして、ときどきかき混ぜながら18分煮る。

具材を加えるとき、そのタイミングは、

  1. 米を入れる前にたまねぎ油で炒める。
  2. スープを入れた直後に入れて米と煮る。
  3. 火からおろす直前に混ぜる。 
  4. 器にリゾットを盛り、上にトッピングする。

のいずれかです。 

これに対して、ここで提案する「簡単リゾット」は次のようなものです。 

  1. 鍋に具材とスープの素を入れ、水3カップを注いで強火にかける。 
  2. 沸騰してきたら米1/2カップ、サラダ油大さじ1、塩その他調味料を加えてかき混ぜ、再び沸騰してきたら中火にして、ときどきかき混ぜながら18~20分煮る。

本式のリゾットと比べて何が「簡単」かというと、 

  1. 本式のリゾットは炒めた米に熱いスープを加えて作るので、米を炒めて煮るコンロとは別にスープを沸かすコンロが必要だが、「簡単リゾット」は沸かしたスープに生米を入れて煮るのでコンロがひとつで済む。
  2. 本式のリゾットは米の煮え加減を見ながら少しずつスープを加えていくが、「簡単リゾット」は途中で一度かき混ぜるだけで基本的には時間まで放置して作る。

の2点です。あと

  1. 具材をあらかじめまとめて洗って切って冷凍しておけば、調理ごとにまな板と包丁を使わずに済む。

といった点も挙げられます。

「この方法でヌカ臭くなりませんか?」という疑問もあるかと思うが、経験的に言うとならない。スープに油を入れればそれで大丈夫のようだ。あるいはしっかり味つけするのでヌカ臭さが分からないだけかもしれないが。

第4章で具体的なレシピを紹介する。

*

この「簡単リゾット」を、ぼくは2001年から2011年までの10年間、作り続け食べ続けた。『炊飯器のない生活』を書いたのはたしか2004年の春で、その頃にはひととおりのレシピは完成していたと思うのだが、それでもそれから6年近く食べ続け改良を加え続けたので、今となっては2004年当時のレシピをそのまま紹介するのではなく、いまの舌で納得できるものに改訂して紹介したいと思う。

*

第5章で必要な調理器具の説明をする。

調理道具を何もお持ちでない方が「簡単リゾット」を作ってみようという場合、とりあえず必要なのは

  1. 火力の調節できる加熱器とそこで利用できる鍋

です。ガスが引かれていればそれを利用してもいいですが、ひとり暮らしの調理器具としては電気グリル鍋が安価で重宝します。ほかには

  1. 木製または竹製のへら・スプーン 
  2. 計量カップ
  3. 包丁・まな板

などが必要ですが、これらはいずれもいわゆる「100円均一ショップ」で手に入ります。

あと、調理中にさし湯をする場合があり、お湯が要る。やかんをガスコンロにかけてお湯を沸かし魔法瓶に入れておくか、電気ポットでお湯を沸かしておく。電気グリル鍋と電気ポットの組み合わせの場合、同時に加熱状態にするとブレーカーが落ちることがあるので、ポットのお湯は料理を始める前に沸かして保温状態にしておく。

余談だが、2004年当時、ぼくは電子レンジというものを持っていなかった。翌年思いついて電子レンジを買い、あわせて村上祥子さんの本をまとめて買い込みあれこれ試してみたのだが、何がいけなかったのか、本に書いてあるような料理ができた試しがない。電子レンジ自体はレンジトースタータイプのもの・5段階切替インバータ式のもの・出力が1段階しかなく解凍はインターバル運転で対応という旧式のものと3つ使ったが、結局は冷凍したごはんを解凍したりインスタント・ラーメンを煮たりという程度のことしかできなかった。ガスコンロを持たない生活を長く続けたので加熱調理器として電子レンジは多用した(電子レンジと耐熱ガラスのキャセロールで「簡単リゾット」を作ったりもした)けれど、気がつくと電気グリル鍋で「簡単リゾット」を作る生活に戻っていたような気がする。

(2014年5月)

おまけ。割愛した「自炊のメリット/デメリット」から。

Neapolitaner

Neapolitaner 職場のいわゆる「お局様」が欧州を漫遊されてご帰国になりお土産を下さった。それが冒頭の写真である(食べかけで恐縮である)。中身は「ヘイゼルナッツクリームをはさんだウェハース」であるが、包み紙に "Original Neapolitaner" とある。オーストリアのお菓子らしいのでドイツ語なんだろうが、何と読むのか分からない。「ネアポリターナー」?「ネアポリタネール」?しかし発音はともかく意味は「ナポリの」である。つまり英語で言えば「ナポリタン」である。

へえ、と思う。日本人にとって「ナポリタン」と言えばスパゲティだがオーストリアの人にとって「ナポリタン」と言えばヘイゼルナッツクリームのウェハースなのだ。面白いと思ったので "Neapolitaner" "Neapolitan" 「ナポリタン」でそれぞれグーグル検索してみた(「インターネット・エクスプローラー」をお使いの方は下記リンクを「新しいタブで開く」か何かでご覧いただくといいと思う)。

ご覧のとおり、ドイツ語の「ネアポリターナー」だか「ネアポリタネール」だかだとこのウェハースが出てくる。そう、この「マナー」のウェハースのうち「ネアポリターナー」と呼ばれるものはヘイゼルナッツクリームのものだけのようだ。英語の「ニーアポリタン」だとなんか犬の写真が並んでいるが、辞書とかを見ると三色のアイスクリームのことだと書いてある(ここでヘイゼルナッツが登場すると面白いのだがそういう要素はひとかけらもない)。日本語の「ナポリタン」はご存じのとおりケチャップ味のスパゲティである(今で言うところの「アマトリチャーナ」の昭和風親戚である)。

なんでヘイゼルナッツクリームのウェハースを「ネアポリターナー」と言うのかというのは、「Google翻訳」を使ってみたところ、「ウィキペディア」のここに書いてるっぽいということだけは分かった。が、機械翻訳の限界か、言っていることがさっぱり分からない。ドイツ語の分かる方はご自分で納得されたい……と書こうと思ったが、コピペしたところアクセント記号がなくなってしまったのでこれでは訳が分からないかもしれない。

Der Name Neapolitaner kommt daher, dass die Haselnusse fur die Fullung ursprunglich aus Neapel stammten.

Neapolitaner-Waffeln Wikipedia, der freien Enzyklopadie

ドイツ語を日本語に訳そうと思うからうまく行かないのであって、ヨーロッパ語どうしなら何とかなるだろうかと「Google翻訳」で英語に訳してみたらこう出てきた。

The name of Neapolitans is because the hazelnuts were originally for the filling of Naples.

「ヘイゼルナッツはもともとナポリのフィリング用だった」。「フィリング・オブ・ネイプルズ」というのがどういう意味なのか分からないが(ドイツ語と見比べるといくつかの単語が欠けているような気がしないでもないが)、ナポリの人はヘイゼルナッツクリームが好きでいろんなものにヘイゼルナッツクリームをはさんで食べる習慣があるのだろうか。日本人のあんこみたいなものか。分かんないけど。

で、さらに調べたところ、どうやらヘイゼルナッツはナポリの名産品のようだ。日本語の「ウィキペディア」でヘーゼルナッツを引くと「中央アジアでの栽培が盛んで」とあるが、トルコで採れるならナポリでだって採れるものなのだろう。ナポリの人はカフェ(エスプレッソ)にヘイゼルナッツペーストを入れて飲んだりするみたいだと、この検索結果に出てくるブログなんかを読むと書いてある。濃いエスプレッソにヘイゼルナッツペーストを入れると美味かろうと、カフェインが身体に合わず飲めないぼくは想像するだけだが、上の文章に言う「フィリング・オブ・ネイプルズ」というのはこういうことを指しているのかもしれない。

そういうわけで、日本の「ナポリタン」がナポリと縁もゆかりもないものだというのとは違って、このウェハースは「ネアポリターナー」と呼ばれることにそれなりのちゃんとした意味があるようだ。

(2011年6月)

サイゼリヤでフルコース

Saizeriya お金は、ないならないなりの楽しみ方というものがあるのである。

ぼくはだいたい、ひとりで居酒屋や中華料理屋に行くと\4,000、ふたりで居酒屋や中華料理屋に行くと\12,000、ひとりでワインを飲みに行くと\6,000~\10,000、ふたりでフレンチを食べると\25,000払う。居酒屋や中華料理屋にふたり以上で行くとひとり当たり\6,000になってしまうのは座興が乗って飲み過ぎ・食べ過ぎるからだろうが、ふたりでフレンチを食べに行ってひとりでワインを飲むよりひとり当たり高価につくのは単純に店のグレードが上がるからである。フレンチらしいフレンチを食べてひとり\5,000程度に抑えたいというのは、ぼくの感覚からすれば無理である。それは結局フレンチに何を期待するかという問題なのだが、「ジビエ」とまでは言わなくても、ウサギ・ウズラ・鴨・キジなんかをガツガツ食べながらワインを1本空けたいというふうにフランス料理をイメージすると、それは\5,000ではできないことだ。

で、中途半端なものに中途半端な金を払うくらいだったら、人間、割り切りも必要じゃない?という話である。

ぼくが「サイゼリヤ」という店を使うようになったのはとっても近年、外食でワインをガブガブ飲む習慣ができてからである。この店はいちおうイタリア料理店で、アラカルトからいちおうフルコースが作れる。イタリア料理のフルコースは前菜のあとがパスタやリゾットなどの穀物である。そのあと肉か魚を1品食べてデザートである。

冒頭に掲げた写真は一例である。トマトとモツァレラにオリーブオイルのドレッシングのかかっているのが前菜。「サイゼリヤ」の前菜はあとグリーンサラダっぽいものか生ハムが選べる。パスタはペペロンチーノ。肉はチキンのグリルだが、ほかには牛肉のステーキやカツレツが選べる(ミックスグリルが人気だという)。デザートはカラメル(プリン)。左奥の丸いのは「フォッカチオ」というパンである。ワインは白。美味いワインではないが、口当たりがよくほどほどに飲める。もちろん全部食べた。すいすい食えるが、全部でおそらくおよそ1,800kcalである。すなわち本当は2人でシェアしてもいい量なのだろう。

Receipt ついでにレシートの写真をつける。今回は\1,825である。2人でシェアしたらひとり当たり\1,000以下である。実際にはこれを2人でシェアすると気分的にわびしいと思うが、この倍の量を注文して(すべて2種類1品ずつ注文して)4人でシェアしたら結構楽しい食卓になるのではないだろうか。そしてひとり当たり\1,000以下である(酒代込みで!)。

「サイゼリヤ」の残念なところはパスタが美味しくないことである。「サイゼリヤ」の料理を指して「コンビニ料理を皿に盛っただけ」という人がいて、ぼくはそうも思わないが、パスタに関しては反論しがたい。ぼくのようにフルコース食べる人間にとってパスタは食事の1/4の意味しかないが、イタリア料理屋すなわちスパゲティ屋だと思っている人にとってこれは致命的である。クリームソースのものだとあまり気にならないが、今回のようにペペロンチーノなんか注文した日にはもうダメである。でもこの値段なのだから文句は言わない。自分で作っても、下手したらこれより高くつくぐらいの値段だ。

*

ある店の料理でコースやセットが組めるか、というのはその店の活用度をはかる指標になる。魚と肉と野菜と穀物でコースを組んでその店で出る酒に合うならその店は接客に使えるし(「ひとに飯を食わせる」という意味。相手が誰かによってグレードは変わる)、魚か肉か野菜かと穀物を組み合わせてセットにし量と値段が現実的な範囲で収まるならその店は自分が食事できる場所になる。今回の話は、結局「サイゼリヤ」がスパゲティ(あんまり美味しくない)を出すファミレスに過ぎないのかそれとも一応イタリア料理屋ということにしてもいいのかという問題だったのだが(ぼくの中ではいちおう及第点である)、居酒屋や中華料理屋でも、料理を組み合わせてちゃんとしたコースを作れるところとそうでないところが存在する。居酒屋でそれができれば酒を飲まない人が食事をすることができ、中華料理屋でそれができれば酒を飲むことができる。

(2011年5月)

小松菜の保存方法

「小松菜を冷蔵庫で保存するのは難しい」と言う人がいるようだが、そんなことはない。

ただ、コツというか、いわば「掟」があるのだ。それは「保存に耐えるのはキズのないものに限る」ということであり、だから小松菜を保存するにあたっては、キズのあるものとないものとをより分けるという作業が必要になる。

手順としては、

  1. 茎の根元を切り落とす。
  2. 流しにぶちまける。
  3. 次のいずれにも該当しないものだけより分け、レジ袋に入れる。
    • 色が変わっているもの
    • 茎が折れているもの
    • 葉が破れているもの

より分けたところを写真で示す。今回は2束買ったのだが、保存に耐えるものがちょうどひと束分あるかないかという感じである。 Komatsuna01

このとき小松菜は洗わない。洗う過程でキズがついてしまうのと、水でべちゃべちゃになるとそこから痛むようだというのとがある。しおれている場合は、より分け終わったあとから手を濡らして指を弾き水滴をちょっとだけかける。あとは、レジ袋をくるくると巻いて冷蔵庫に突っ込んでおけばいい。しおれていても翌日にはウソのようにシャキッとなっている。この状態でまる1週間は持つ。当たり前だが、このレジ袋の上に大根やブロッコリーを乗せてはダメである。葉っぱに無理な力がかからないようふんわり置いておく。

では、保存に耐えないと判断された、色が変わっているもの・茎が折れているもの、葉が破れているものはどうするか。色が変わっているものは、程度いかんでは捨てる。これは仕方がない。で、それ以外のものは、その場で調理してしまう。大きさが不揃いで扱いにくいので、まず刻み、それからざるに入れて洗う。切ってから洗うと栄養が抜けるとかおっしゃる方もいると思うが、その場合はバラバラの状態で大きなボールに入れて洗いながらひとつずつ取り出していくといいのではないかと思うが、面倒くさいのでぼくは先に切ってしまう。洗い終わったところを、保存する方のレジ袋といっしょに写真で示す。 Komatsuna02

みなさんは小松菜はどういう料理にお使いだろうか?緑黄色野菜なので油炒めがベストなのだろうと思うが、ぼくは後始末が面倒くさいので油炒めという料理をほとんど作らない。にんにくと唐辛子でいわゆる「アーリオ・オーリオ」を作りざく切りにした小松菜を炒めて塩を少し振るだけですばらしいおかずになるが、もう10年くらいそんな料理作ったことがない。

日本人は茹でて「おひたし」にするのが普通だと思うが、韓国人はナムルにするだけでなくキムチにもする。ほうれん草のようにアクのある野菜ではないので、生のまま塩漬けにして食べることができるのだ。試しにやってみたところ、火を通したものからは想像のつきにくい辛味と苦味があり、酒に合う。『キムチと韓国家庭料理』という本に「韓国ではだいこんの葉がないときに、かわりに小松菜が使われます。」と書いてあるので、ぼくも大根の浅漬けを作るときに刻んだ小松菜を混ぜる。さっきも言ったようにやや刺激的な味なので、まろやかな味をお求めの向きには合わないかもしれない。

おひたしにせよナムルにせよいったん茹でるのだが、生で食べられるものだと分かってみると、鍋でぐらぐら茹でる必要はまったくないと気づく。鍋に湯を沸かし、写真のようにボールにざるをしかけた状態でぶっかければいいのである。あとはざるを上げて湯を捨て、水に取り直してから固く絞る。栄養が抜けるのを心配される向きはお好きな方法を取られたい。で、今回はナムルというか、塩とごま油で揉んでおく。チューブのにんにくとしょうが、あと胡椒とすり胡麻があるとナムルっぽくなるが、ないので割愛する。それでもおかずとしては申し分ない。ちなみにざるとボールはキャン・ドゥ、器はダイソーである。 Komatsuna03

小松菜は茹でた状態から冷凍保存が利くが、さて解凍して何に使うよ?と考えるとあんまりピンと来ないのでぼくは最近はやらない。和風の料理としては薄揚げと炊き合わせたりするのがいいのかもしれない。

(2011年4月)

大阪人の麺類の食べ方

これから書くことはあくまで一例に過ぎない。

関東に移り住んで5年目になるが、濃口しょうゆで作ったそばつゆに初めて食傷するようになった。ぼくは麺類にさほど執着がなかったが、30代の前半に出張で出かけた信州・上松でそばを食ってからそば派になり、以来ずっとそばばかり食べてきた。関東風の濃口しょうゆをかつおだしでのばしたそばつゆが好きだったのである。だが、年を食ってきたからなのか、それともやっぱりひとは生まれ育った場所の文化に回帰していくものなのか、最近は薄口しょうゆでつくったうどんつゆの食べられる店ばかり探している。

父は愛媛の人であまり麺類を食べる習慣がなかったようなのだが、母は大阪人で「粉モノ」大好きである。むかしつき合っていた大阪人の女の人に「オレは粉モノは女子供の食い物だと思う」と言ったところ「うどんやラーメンも?」と言われ、なるほど、大阪人にとってはうどんやラーメンも粉モノなのか、と思ったが、たしかに母もお好み焼きと同じくらい麺類が好きである。

大阪人はうどんしか食べないというわけではなく、日本そばも中華そばも食べるのだが、調理方法がうどんと全く同じである。薄口しょうゆで仕上げたかつおだしに麺を入れ、蒲鉾のスライスと薄揚げの刻んだのとネギと、あととろろ昆布を入れる。母はとろろ昆布をいわばだし代わりに入れていたが、外食するとワカメが入っていることが多い。中華そばをかつおだしで食べるというのは訳が分からないと思う人がいるかもしれないが、母は好んでよくやっていた。あるとき「姫路駅の駅そばは黄色い」という話を聞き「ああ、あれを売る店があるんだ」と思って相生に出張に出かけた帰りわざわざ姫路で降りてホームで食べた。すでに飲んでいたためあんまりちゃんと記憶にないが、「さしてうまくもないな」と思ったということは逆にぼくが想像していたとおりの料理だったということだろう。で、そのことが、「黄色いそばを薄口しょうゆのかつおだしで食べる習慣が関西にある」ということの証拠かと言われたらそれは分からない。「姫路の駅にあって、母はそれを昔から家庭でもやっていた」というだけのことである。

というような話をブログで書こうと少し前から思っていたのだが、自分自身外で食べるそばに食傷して、というか外で食べるうどんに納得できなくて、じゃあ家で作るぞ、ということになり、「ヒガシマル」のうどんスープを使うことにして、能見台の「イトーヨーカドー」で茹で麺と蒲鉾と薄揚げと刻みネギととろろ昆布を買ってきて作ってみたので写真をアップする。ちなみに器はダイソーである。

まずうどん。 Udon_noodle

次に日本そば。「日本そば」という言い方自体あまりよそで聞かないが、「中華そば」との区別である。 Soba_noodle

そして中華そば。 Chinese_noodle

さっきも書いたが、こういう風に日本そばや中華そばを調理しても、正直言って大して美味くはない。麺の味にだしが負けてしまうのだ。だが関西の企業の社員食堂や大学・高校の学生食堂で日本そばを注文して出てくるものは、ぼくの記憶では大同小異である。ガッコの記憶は忘却の彼方だが(それでも家庭で食べていたものの認識を覆すものではなかったのだろう、逆に実際高校の学食にはカレーとか水菜のおひたしとか、鮮烈な記憶のある料理があったことを思い出せば)、彦根にいたとき「フジテック」の社員食堂で出てきたそばはほぼこんな感じで、というか「ヒガシマル」のうどんスープよりもっと薄い、まるで台湾の人が食べる麺みたいで(台湾の人はお粥の代わりに麺を食べながらおかずを食べるので麺のスープは味がとても薄い。ぼくはあれはあれで大好きなのだが)、「そばが食べたい」と思って食べると暴れたくなるが、でもみんな暴れずに食べているのは、従業員が家庭で食べているそばのイメージとさほど離れていないからだろう。ちなみに「フジテック」の本社はぼくがいた時より今は格段に立派になっているので(新幹線の車窓から、関東からだと米原を出てすぐ右手に見える)、社食で出てくるものも昔とは違う可能性もある。

いまのぼくの認識で言えば、うどんだってこうやって食べるのがベストだというわけではない。打ちたてのうどんは茹でて水でしめてざるに上げ、おろししょうがと生しょうゆとあれば白すりごまをかけて食べるのがいちばん美味い。もともとどこの料理というか食べ方なのか分からないが、少なくとも自分で打つとそういう食べ方をする。うどんを打つのにせいいっぱいでだしを取る気力がなくなってしまうからだが、白い小麦粉を打って作る麺にいちばん合うのがしょうがなのだというのは理にかなっている(白い小麦粉は身体を冷やし、しょうがは身体を温める)。

この料理のポイントはむしろ、蒲鉾と薄揚げにあるのではないかと今回食べて思うのだ。関東風のそばに合うのは天ぷらとかきつねとか、そういうしっかりした味の食い物だと思うのだが、薄口しょうゆのだしに蒲鉾の薄切りと刻んだ薄揚げというのはいいバランスなのだと思う。とろろ昆布はだしのためだとさっき書いたが、食感的に言ってここはワカメよりとろろ昆布の柔らかく甘いのが合う。「関西風」というのはそういう細かいニュアンスの積み重ねで成立しているのだ。自分で気づいてなるほどと思う。

(2011年4月)